2025年度学位授与式・学長告辞
告辞
(2025年度卒業式)
皆さん、ご卒業おめでとうございます。大学を代表いたしまして、心よりお祝い申し上げます。皆さんの素晴らしい門出を祝し、はなむけの言葉をお贈りしたいと思います。
「2003年4月7日」は、とある特別な日です。何の日か、ご存じですか?「鉄腕アトム」の誕生日です。「鉄腕アトム」は、ここにいる多くの皆さんと同い年ということになりますね。ご存じの通り、手塚治虫氏の代表作であり、わが国の漫画・アニメ史上、燦然と輝く名作です。
アトムは10万馬力という途方もない怪力を操り、自由に空を飛び回ります。漫画の連載が始まったのは、今から70年ほど前の1952年。当時からすれば、はるか未来の21世紀を舞台とする、夢が溢れるお話だったのです。そうすると、一見、科学技術の素晴らしさを讃える物語と思われるかもしれません。しかし、手塚治虫氏が描きたかったのは、科学技術が暴走することへの警告だったそうです。連載が始まったのは、まだ月ロケットもコンピューターもない時代です。現代にも通じる問題を既に見抜いていたとは、さすが手塚治虫氏。漫画の神様といわれるわけですね。
私が申し上げたいことは、実は、ここからです。「鉄腕アトム」は、初めから世に受け入れられていたわけではありません。連載されていたころ、その当時の「常識」からすれば俗悪な読み物であると、強く批判されていたそうです。追放運動すらおきています。当時の「常識」によって、「鉄腕アトム」が潰されていたらと思うと、ぞっとしませんか。もしかすると、現代の、漫画・アニメの世界はなかったかもしれないのです。
常識を軽んじて良いわけではありません。ただそれ以上に、多様性が大事だ、ということです。未来は、常識を突き破って現れるものです。このことを、皆さんは本学で、既に学んでいるはずですが、改めて、肝に銘じてもらいたいと思います。
もう一つ。皆さんと同い年のはずの鉄腕アトム、これほど優秀な小型ロボットは、現代でもまだ実現していません。漫画の中の夢のような「21世紀の未来」は、いまだ遙か彼方にあるのでしょうか。
もっとも、スマートフォンを使えば、世界中の人と瞬時にビデオ通話でつながることができますし、同時通訳も可能です。AIは、あらゆる物事を知っていますし、個人的な悩み事であっても相談することができます。さしもの手塚治虫氏でも、こんな未来は予想できませんでした。社会は、漫画の中の夢を超えて、着実に進歩しているのです。
いかに天才であっても、一人で未来を作ることはできません。「未来」は、多くの人々の、たくさんの夢が響き合い、結集して作られるものです。そしてその主役はいつも、次なる世代です。つまり、皆さんです。
皆さんには、我々古い世代には見えない未来が見えています。遠慮する必要はありません。常識にとらわれる必要もありません。
本学で学んだことを胸に、自信を持って、皆さんの未来に向けて突き進んで行ってください。
改めまして、ご卒業おめでとうございます。今後のご活躍を、心より楽しみにしております。
2026年3月24、25日
愛知大学学長 広瀬裕樹
愛知大学学長 広瀬裕樹

