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学長のことば

2022年度入学式・告辞

告辞
(2022年度入学式)

今年度の入学生の皆さん。謹んでご入学のお祝いを申し上げるとともに、大学の新たな構成員となられたことを心から歓迎いたします。 
さて、皆さんが入学された愛知大学とはどんな大学なのか、ここで少し愛知大学についてお話したいと思います。愛知大学は第二次世界大戦終了後の1946年11月に創立され、今年で76周年を迎えます。 愛知大学の名前は「知を愛する者が相集う」ことから「知を愛する」という意味で付けられました。次に、愛知大学のめざすべきミッション(使命)についてお話しします。大学の設立趣意書は、戦争の深い反省にたって世界文化と平和に寄与するために日本の人文系の学問を盛んにし、才能ある人材を育成することを使命とすることを述べています。そして特殊な使命としてひとつは大都市への偏重集積をなくし、地方分散を望むとして地方社会における学問・文化の振興と貢献が謳われています。二つ目は国際的教養と視野をもった人材の育成です。愛知大学は当時「国際文化大学」としての特徴をもつとも述べています。以上の点が整理されて今日「建学の精神」とされています。
まず、地域社会への貢献、つまり地方・地域における学問・文化の振興を図るという使命は、当時中部地方において法文系の大学がひとつもなかったことを背景としています。つまり、愛知大学は中部地方において最初の法文系大学であったのです。そして今日、地方創生、地方分権が大きな政策課題とされているなかで各地域がまちづくり、人づくり、産業の発展と仕事の創出をはかり、大学が地域の高等教育研究機関として地域の発展を担う役割を果たすことが求められています。その意味では、地方の文化・社会への貢献という設立趣意書の使命はきわめて今日的な課題でもあるといえるのです。
次に、国際的教養と視野をもつ人材の育成という使命は、本学の前身ともいえる戦前、中国上海にあった東亜同文書院の伝統を継承するものでありますが、これは今日グローバル化が進む世界においてますます重要な課題となっています。今日の世界は国家の枠を超えて、ヒト、モノ、カネの国際的移動が急速に増大し、経済のグローバル化と相互依存が進展し、デジタル情報通信技術の著しい進歩は世界のコミュニケーションのありかたを大きく変えています。このなかでグローバル化に対応できる国際的人材、グローバル人材の育成がますます求められています。皆さんがこのような使命をもつ愛知大学に入学されことを自覚して本学の歴史についても関心を持ってほしいと思います。
ところで、皆さんは大学における目標についていろいろ考えていると思います。学びの目標について、本学では各学部、短期大学部、大学院研究科において卒業・修了までの学修成果目標を設定しています。例えば、「筋道を立てて物事を考え、課題を解決することができる」等と明示しています。そしてそのためのカリキュラムを適切に編成し皆さんの学修の機会を提供しています。皆さんは、所属する学部等が設定している学修成果の目標をぜひ確認して、自らの学びの目標設定の参考にしてもらいたいと望みます。
ここで、大学での学びについて皆さんへの期待のメッセージを送りたいと思います。
一つ目は、幅広く多様な学びを目指すことです。この点は特に学部所属の皆さんにお伝えしたい。皆さんはそれぞれの学部・学科に所属し、学習することになります。学部・学科のカリキュラムに配置されているさまざまな科目を学修することはいうまでもありません。同時に、課外授業、クラブ・サークル、ボランティア、資格取得講座などのさまざまな課外活動も重要な学びの場です。また国内にとどまらず、外国に留学し、外国の社会や文化に直接触れることも、貴重な学びの機会です。学びの場を広げるうえでも多様な人々との交流は不可欠です。皆さんの利用できる時間は限られていますが、できるだけ学びの幅を広げてほしいと思います。学びの対象は、自らの目標にあっているかどうか、将来役立つかどうかということに限定する必要は必ずしもありません。なぜなら、われわれは世界においては、予想していなかった出会いや体験を通して自らの目標や進路が変わること、または学びの過程になかで目標が次第に明確になることはよくあるからです。社会の変化に柔軟に対応し、新たなアイデアを考え、将来の自らの道を切り開くには、多様な学びを通していろいろな視点や考えに接して自らの視野を広げ、考えを豊かにすることが必要です。
二つ目は、自ら考える力と学びの方法を身に付けることです。それぞれの専門的な知識・理論を学ぶことは重要なことであり、またスキルを獲得することも大切です。それにとどまることなく、それぞれの知識や理論を参考に、実際の問題を見つけ出し、その問題についてその背景、構造、影響等について自らの頭で考え、実際の証拠を踏まえて説明や解答を論理的に引き出すという方法を学び、身に付けてほしいと思います。これはものごとの本質をより深く考え、理解するうえで極めて重要な力であり、学問研究の基本的な方法でもあります。それはますます変化の激しく、不確実で予測が困難なこれからの社会、過去の単なる延長線上で将来を予測できない社会において、皆さんが主体的に問題を理解し解決して生きていくうえでも極めて重要な能力です。こうした自らの頭で考える力と学びの方法を身に付けた自律した人間になることを目指してほしいと願っています。
最後に、本学の教職員一同は皆さんと共にあり、皆さんの学びを支援し、皆さんが学習の成果を得ることができるよう最大限努めること、そして本学での学びと交流が皆さんの人生における貴重な財産となることを願っていることを申し上げ、私の告辞と致します。

2022年4月3、4日
愛知大学学長  川井伸一