グローバル化する食品の流通は、安全性を確保できるのか?担当教員:国際教養学科 教授 樋野 芳雄
●私の研究テーマ
「食の安全性確保―複雑化する食事情とグローバル化の中で」 食の流通のグローバル化によって、スーパーに世界各地の多様な食品が並ぶ一方、BSE感染の拡大を発端とする牛肉の輸入制限など食の問題も世界規模で広がるようになりました。また外食や中食の需要が高まり、物流の形態も変わりつつあります。そこで食の安全性確保に関わる諸問題を検証し、現代の食品流通に必要な安全管理体制のあるべき姿を論じました。たとえば流通のグローバル化は、長距離輸送による品質悪化を防ぐための防カビ剤や保存料など、添加物使用の増加をもたらしています。また安全性を保証するための賞味期限の設定は、食品ロスという新たな問題を引き起こしています。検証を行う中で判明したのは、これらの問題が私たちの食に対する多様なニーズに応える過程で起きており、根本的に変えることは容易ではないということです。国やメーカーだけでなく、消費者自身が食の安全を長期的な視点で考えることが重要という結論に至りました。
●私の研究活動
グローバルな視点で環境問題や持続可能な社会を考える。 1・2年次は国際政治学や宗教学などを中心に学びました。宗教が生活や文化に影響し国民性を形成する過程など、どれも興味深くレポートの作成にも力が入りました。異文化を学ぶ中で湧き上がったのが「日本の外側だけでなく、内側も見てみたい」という気持ちです。そこで3年次は環境問題や持続可能な社会を研究する樋野ゼミに所属しました。地球生態学の文献講読や、朝市での生産農家へのインタビューなど、科学的観点から環境や社会を考え国内の諸問題を研究する活動を通して、物事を多角的に見る力が身につきました。卒業研究では過去に起きた食品事故、輸入食品における農薬の危険性、食品ロスの問題や低温ロジスティクスの発展と課題など、現代の食の諸問題を先行研究や文献から検証し、現代の食生活や食品流通のあり方を深く考える機会となりました。