コーパス言語学で、時代と共に変化する英語の姿を観察する。担当教員:英語学科准教授 西部 真由美
●私の研究テーマ
“On Subjective and Objective Personal Pronouns”“It’s me.(それは私です)”は、現代英語でよく見られる表現ですが、本来は“Itʼs I.”が理にかなった英文です。かつては主格のIを使っていましたが、時代とともに目的格のmeを使うようになったのです。私はこの変化に着目し、「人称代名詞の主格と目的格について」をテーマに研究しました。コーパス(言語を分析するためのデータベース)で該当する英語表現のパターンを抽出し、現代の状況を分析。すると、現代英語では一人称の目的格meが多く使われていることが確認できました。さらに歴史的な変化を分析すると、1980年を境に目的格の使用が急増していました。この現象の要因を探る中で、可能性の一つとして浮上したのが聖書の影響です。聖書は英語圏の生活文化に深く浸透しており、聖書由来の英語表現も少なくありません。そこで聖書の文章を時代別に分析したところ、1980年以降に出版された聖書で目的格が使われるようになっていました。この結果から、聖書の影響を強く受けたのではないかという結論に至りました。
●私の研究活動
言語学の観点から、英語の構造と特質を知る。言語学という学問に魅了されたのは1年次の「言語学入門」の授業でした。知れば知るほど面白く、自分でも世界中の言語の語順を比較分析して発表したほどでした。「英語学概論」の授業で、語用論や意味論など言語学的な視点から英語の特質を学ぶ中で、とりわけ関心を持ったのがコーパス言語学です。コーパスは大量の言語を収集したデータベースであり、コンピュータの発達とともに言語学研究の有益なツールとして広く使用されています。卒業研究では、コーパスから抽出した数千のデータを逐一チェックし、精密かつ正確なデータ分析を心がけました。英語がどのように使われ変化したのかを、数量的に観察し比較する中で、新たな発見を得たことは大きな喜びとなりました。