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所在地愛知県津島市百島町字三正六歩23番地
設立1981年6月
代表者代表取締役社長 服部嘉高
従業員数30名(2023年現在)

viewpoint 業界

商社とは、原料や加工品、サービスなどあらゆる商材を扱って売りたい相手と買いたい相手を結びつけるBtoBのビジネス形態である。
また、商社は大きく分けて総合商社と専門商社に分けられる。まずは、総合商社についてみていく。総合商社とは、身近な食料品から産業の根幹をなす石油や天然ガスなどの資源、さらには金融から宇宙開発まで、あらゆる事業を手掛けている。
それに対して、専門商社は特定分野の商材を手掛ける。例えば、綱手やフランジ、バルブやネジ、それ以外でも、特定の食料品があげられ、円滑な取引を進めるために、取り扱っている分野に対して幅広い知識と、提案力が不可欠である。



viewpoint 企業

 株式会社服部商会は、愛知県津島市を中心に地域密着型の経営を行っているNC工作機械に特化した総合商社である。切削工具やエアー機器・工具研削工具・オフィス用品ITツール・ソフトウェア健康経営支援コンサルティング事業など営業品目は全16種。幅広い商品とサービスを届けている。
 そして服部商会には大きく分けて3つの強みがある。
 1つ目はスピーディな調達力である。確立された独自の物流ネットワークとエリア別のチーム編成で高いレスポンスを実現し、最短で即日納品を可能にしている。
 2つ目はNOと言わない提案力である。工作機械・工具をはじめ、中古機械、テナント倉庫、ホイストなど、その他工場のあらゆるものをサポートしている。
 3つ目は充実したアフターフォローである。独自ネットワークで、電気工具類から工作機械、家電製品の修理まで幅広いサポートを実現している。これらの理由で服部商会は多くの企業から選ばれている。
 このように多くの企業の発展に貢献してきた服部商会の経営理念には、真心、提案力、スピードがある。これらの経営理念には、「すべてはお客様の笑顔のために真心こめて」や「五感をフルに使え」などの創業者の想いが受け継がれている。そして服部商会はモノづくりの成長と発展への貢献を使命とし、みんなに愛される100年企業を目指して人を大切にする経営を行っている。
 また、服部商会は、社会や環境への配慮は企業としての高いリターンにつながり、ひいては地域・人・社会への貢献となるとの信念のもとに、健康経営やペーパーレス・リサイクル、地域ボランティアとの協働などの取り組みを積極的に行っている。


viewpoint 健康経営

 健康経営とは何か。それは、社員の健康管理を経営面から考え、実施することである。
社員にとって健康的な仕事を行うことで、生産性が上がり、組織も活性化する効果があるとされている。また、活性化により業績向上や組織の価値向上へ繋げることができる。
 健康経営の現場で重要となるのは”Wellbeing”である。
Wellbeingとは肉体的、精神的、社会的など多面的に満ち足りた幸福感のことで、それが常に持続している状態のことを指す。 企業のWellbeingへの投資は会社全体に大きな影響を与え、大きな利益につながる。
 ではWellbeingで得られる利益とは何か。今回は3つに分けて紹介する。
  1つ目は、生産性の向上である。社員の健康を保つことで集中力や生産性が上がる事が期待される。また、体調不良や離職を防ぐことで、人材を効率的に育成することができる。
 2つ目は、リスク回避である。病気や事故のリスクを防ぎ、労災認定を避けることができる。また、病気を未然に防ぐことで健康保険の負担額を減少させることが期待される。
  3つ目は、イメージアップである。会社・社員を大切にする企業という良いイメージが付き、企業価値も上がっていく。
 では、どういった流れでWellbeingの利益が得られるのか。今回は、オフィス環境の整備を具体例として挙げて紹介したい。オフィス、つまり働く上での空間・設備・情報・運用は非常に重要であり、これら環境を整備することによって、社員自らが、オフィスを清潔に保ったり、動きやすくなったことで社員同士でコミュニケーションがとれるようになったりするなど、社員の自発的な健康保持・増進の動きが高まることがわかっている。
専門用語ではこれを、「プレゼンティーズムとアブセンティーズムによる経営損失の防止」という。プレゼンティーズムとは、健康問題による出勤時の生産性低下。アブセンティーズムとは、健康問題による欠勤である。
これら問題を克服していく、予防していくことが健康経営の流れであり、目的なのである。
 また、健康経営について積極的に行っている企業に対しては経済産業省から健康経営優良法人として認められる。そして、その健康経営優良法人の中から最も積極的に行っている上位500社に対しては大企業にはホワイト500に、中小企業にはブライト500に認定される。


従業員のWellbeingは、企業価値をも高めます


株式会社服部商会
常務取締役
ヒューター 嘉緒里 氏



服部商会は2019年から健康経営を始める。当時、服部商会を含む中小企業は、54%以上が人手不足であった。また、その2年前には、働き方改革が断行され中小企業のホワイトな体制が世間的に重視されるようになった。だが、ホワイトな体制、いわゆるホワイト化にはその分、「時間とコスト」がかかる。この、「時間とコスト」がホワイト化する企業、特に中小企業には痛く感じる。また、実際に働いている社員は当時、ホワイト化には非協力的であった。従業員の目には「理にかなってはいるが、「時間とコスト」の無駄遣いと考える者がほとんどだった。
健康経営を推進する側と社員との間に、モチベーションのズレが生じていたのである。
しかし、このようなズレがあっては、健康経営は大成しないと考えた服部商会は、モチベーションのズレを埋めるため、ただ闇雲に健康経営を推し進めるのではなく、戦略的に推進していく事を決意した。
具体的には、モチベーションの揺らぎを克服するために、社員に対し健康経営アドバイザーの資格を取得を促した。そうすることで、「健康経営をしたほうが自分たちにも、会社にも良い」という確信と協力を得ることができると考えたからである。その結果社員たちの確信と協力を得ることができ、モチベーションの差も無くなり、服部商会全体で健康経営に取り組むようになった。
 これまで服部商会が行ってきた健康経営への具体的な取り組みには、バランスボールを活用した業務チェアの導入や人間ドックの半額負担などがある。バランスボールを活用した業務チェアの導入は社員の健康を第一に考え、腰や肩の負担を軽減するために行われた取り組みだ。
そして人間ドックの半額負担は社員が人間ドックを自主的に受けるように促す取り組みだが、実際に30代の社員は80%以上受けるようになった。また、過ごしやすいオフィスを作るために昇降テーブルの設置をし、社員の運動不足を防ぐためのウォーキングラリー実施や、禁煙への対策も行っている。
そして今まで20個以上あったゴミ箱を大きい1つのゴミ箱に変えた。これには最初社員の不満の声も上がったが、結果的に一度立ち上がることによって血流がよくなったり、無駄なゴミも減って環境的にも良い結果となった。
これらのような、独創的かつ、積極的な健康経営に対するアプローチによって、服部商会はブライト500を3年連続で受賞するに至った。
その後、ブライト500の受賞という実績から、多方面から取材を受けるようになり、服部商会や健康経営の認知度は上がっていった。その結果、入社応募者は毎年増え続けているそうだ。
服部商会は健康経営によって、人手不足の問題も解決しつつあるのだ。
 健康経営は中小企業が抱える問題を解決する一つの答えであると、証明したのである。

取材を通してわかったこと

column 発見

 今回の取材を通して、服部商会を通じて、商社という業界について深い理解を得ることができた事とともに、健康経営とは何たるかを直で知ることができた。
 取材先の服部商会の皆様には、あたたかく迎えられ、アットホームな雰囲気を感じた。取材時には、時々冗談をはさみながら、笑顔の絶えない社員のみなさまをみて、すばらしい職場だと感じた。また、来年度には、職場の一部をカフェのようにするようで、益々の健康経営の取り組みを、陰ながら応援している。
 取材の中で特に印象に残っているのは、服部商会が求めている人材についての話だ。服部商会が求めている人材は、「挨拶」「笑顔」「真心経営」「声かけ」ができる「人間性」のある人材だそう。そんな「人間性」があるかどうか見極めるため、新入社員に対し、採用する際に、「いつでも辞めてもいいよ」と提案するのだそうだ。この提案を聞いたとき、非常に驚いた。だが、理由を伺うと、とても理にかなっているなと腑に落ちた。
 服部商会にはこのような「人間性」があるからこそ、地元に愛され、心地の良い職場を作れているのだなと感じた。




チーム紹介

都築 快   (現代中国学部1年)
森 祐乃   (経営学部2年)
柴田 泰成  (経営学部2年)
福山 秀太朗 (経済学部1年)


※本記事は2024年3月現在の内容となります。