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所在地三重県津市中央3番12号津法務総合庁舎

viewpoint 業界

 公務員は主に、国の仕事に従事する国家公務員と、地方公共団体の仕事に従事する地方公務員の2つに分類される。さらに、公務員は行政・公安・財政という役割に分けることができる。その中でも、検察庁に国家公務員の公安という役割を担っている。
 国の秩序を保つ検察庁には、最高検察庁・高等検察庁・地方検察庁・区検察庁の4種類があり、各裁判所に対応して置かれている。検察庁の使命は、社会正義を実現し、市民社会や社会経済の基盤である法秩序を守ることである。検察庁に所属している検察官と検察事務官は、国家公務員に区別され、その役割は刑事事件の真相を警察と協力し、解明することである。検察官は、警察から送致された事件等を捜査し、裁判所に起訴するか否かを判断する。検察事務官は、検察官の補佐やその指揮を受けて捜査・公判活動に携わる。



viewpoint 企業

 検察庁【以下、検察】と聞くと特に堅い職種と捉える人もいるだろう。もちろん難しい法律を扱うことや主に刑事裁判に携わっているということもあり、わたしたちにとって身近に感じられる存在ではない。しかし、検察は日本社会の秩序を成り立たせるうえで、必要不可欠な役割を担っている。例えば、犯罪が起きた際に、被疑者を警察が逮捕した後どのような流れで刑事事件が処理されるのか知っているだろうか。刑事事件に関する主な流れは、捜査、公判(裁判)、執行である。
 検察は主に捜査、公判を担当している。警察の初動捜査や告訴、告発、投書を検察が事件を受理する事から始まる。受理した後、被疑者の取調べや捜査を行い起訴するか不起訴かを決める。起訴(公判請求)した場合、検察官は裁判に立ち会い裁判所で被告人が犯罪を行ったことを証明する。
 津地方検察庁は、地方裁判所・家庭裁判所に対応した検察庁である。地方検察庁は、各都道府県と北海道の函館・旭川・釧路を加えた50か所にあり、各検察庁の職場は、主に、捜査・公判部門や検務部門、事務局部門の3つに分けられる。


検察事務官としての役目

津地方検察庁 
宮﨑 洋平 氏
検察事務官 捜査公判部門
2020年 法学部卒業


業務の説明・1日のスケジュール

 本学OBである宮﨑さんは津地方検察庁において検察事務官としてご活躍されている。検察事務官の中でも、捜査・公判部門、罰金の徴収などを行う検務部門、総務・会計などを行う事務局部門などが配置されており、宮﨑さんは捜査官として、犯罪の捜査や刑事裁判に立会する検察官の補佐などを行う「捜査・公判部門」を担当している。検察官とともに警察から送致された事件などを捜査し、検察官による起訴・不起訴の判断を経て、起訴の場合は裁判の遂行を補佐し、裁判が終わっても刑の執行指揮などの役割を担う検察官のサポートを主な業務内容としている。しかし、起訴できる権限である公訴権は、検察事務官にはなく検察官にしかないため、この点においてはサポートをすることができない。そのような中でも検察官と役割分担をすることで、他の業務の補佐に当たることができると言う。
 宮﨑さんの1日の主な流れは、8時30分に出勤して,その後、メールの確認をし、検事と自分の弁当を注文するなどの庶務的なことから始まり、取調べにおける調書の作成や書類作成を経て、17時15分頃に退勤する。1日の中で行われる取調べは主に2種類あり、午前中に行う弁解録取と通常の取調べがある。弁解録取とは、逮捕されて検察庁に送致されてきた被疑者の弁解を聞く手続きのことであり、被疑者の身柄拘束の必要性を判断する。通常の取調べは、真相究明のための取調べである。この通常の取調べは原則10日以内に行われ、被疑者1人につき多くて2~3回少なくて1回行われている。宮﨑さんの場合、被疑者の身柄を拘束しないままで手続きを進める在宅事件と、被疑者の身柄を拘束して手続きを進める身柄事件のふたつを同時並行で、常時10~20件ほど受け持っているという。

宮﨑さんの仕事から得られた気づき

 宮﨑さんが津地方検察庁に就職してから、最初に所属したのは総務課の庶務係であった。仕事の内容は、休暇関係や決裁関係、郵便物の振り分け、代表電話の応対である。代表電話には、どの課に繋げるべきかわからない電話がかかってくるため大変だったと言う。さらに、就職して間もなかったこともあり検察庁内の部署や課を覚えることから始めなければならなかったので苦労したと話していた。しかし、3~4か月ほどすると業務にも慣れ、スムーズに行えるようになったという。このことから宮﨑さんは、いろいろなことを広く浅く知ることが大切だと学んだ。
 このような業務の中、宮﨑さんが特に印象に残った電話があったという。それは、裁判所の傍聴席が空いていないという苦情の電話であった。傍聴席は裁判所の管轄なので驚いたそうだ。




宮﨑さんの学生時代

 宮﨑さんは、本学法学部に在籍し、刑法や刑事訴訟法についての知識などを中心に学びを深めていた。法学部に在籍した当初は、「地域に貢献したい」という漠然とした理由から公務員を志望していたそうだ。そうした中、3年生の時に合同説明会に参加したことがきっかけで、今の職を知り、検察事務官を目指すようになった。捜査公判などの業務を通じて刑事事件の真相解明に関わることができる点や、一定年数勤務すると副検事などへの昇格試験の受験資格を取得できるという点に魅力を感じたそうだ。しかし、2年生の2月から公務員講座が始まり、それとともに公務員試験の科目や範囲が膨大だった点が、今の職を目指すうえで大変だったと言う。特に、数的処理が苦手で、公務員試験1か月前まで点数が伸びず苦労したという。
 法学部での学びは勿論、学生時代での部活動やアルバイトでの経験が今の職場においても活きていると言う。3年生の夏まで所属していた卓球部では、様々なイベントを企画・運営を行った経験から忍耐力やコミュニケーション能力が身についた。また、アルバイトでは分からないことは聞くように注意された経験をしたことから、分からないということを表現する大切さを学んだ。このような経験から、同じ職を目指す学生に向けてのメッセージとして、「仕事上様々な人と接するうえでコミュニケーション能力が大切となってくるため、部活やサークル、ゼミ、アルバイトなどたくさんの経験を通して色々な人と関わるべき」と言う。その際、報告・連絡・相談、いわゆる「ホウレンソウ」を意識することも社会で生きていくために大切なことであるそうだ。




検察庁で働くうえで必要なこと

Column発見

 今回私たちが取材させていただいた津地方検察庁は、名古屋などの大規模庁に比べて小規模庁である。そのため、人の目が行き届きやすくお互いの助け合いが可能となって、アットホームな職場であることが魅力のひとつであるそうだ。私たちも実際に取材だけではなく、取調室など普段入ることのできない場を見学させていただき、アットホームな雰囲気を様々な場面で感じた。
 また、検察庁ではどのような人に働いてほしいと思うか、検察広報官の関戸さんに伺った。すると、意欲的にチャレンジする人、正義感のある人に働いてほしいと言う。さらに、実際働いている人はどのような人が多いのかを伺った。すると、検察官の持つ強い権限に憧れて正義感の強い人が志望してくることが多いそうだ。やはり最近は法学部出身の方が多いと言う。しかし、中には法学部出身以外の方も多く、法律の知識がなくても十分働くことができる。会計など法学以外の学びも活かせるという点も取材を通して知ることができた。
 このように、取材の前後で、検察庁=堅いイメージという固定概念を覆すものとなり、将来の職業の選択肢が増えた。取材を承諾していただいた津地方検察庁の方々への感謝の気持ちを忘れないとともに、今しかできない経験を自ら実行に移せる学生を目指していきたい。

チーム紹介

植木 佑衣  (法学部2年)
岡崎 遥   (経営部2年)
豊嶋 智南  (法学部1年)
渡邊 健     (法学部1年)

※本記事は2021年10月現在の内容となります。