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所在地岐阜県羽島市江吉良町江中七丁目1番地
設立昭和28年12月25日
代表者水谷 泰三
従業員数214名(2020年3月末現在)

viewpoint 業界

 文溪堂は岐阜県羽島市に本社を置く教育教材を出版している国内有数の会社である。創業明治33年というとても長い歴史を持っており、その中で培ってきた文溪堂独自のノウハウは揺るがない価値を持つものであるため、少子化が進み、コロナウイルスが猛威を振るう現在においても教材の需要が減ることはなく、文溪堂の業績は年々伸び続けている。また、文溪堂では常に子どもたちのことを考え、子どもたちが喜びや楽しさ、笑顔を持って勉強できるように、日々子供たちに寄り添いながら商品を開発・製造している。

viewpoint 企業

 教育教材出版業界とは問題集などの図書教材や裁縫道具などの教材教具といった教育の過程では必要不可欠なものを出版・製作する業界である。また、近年はインターネットなどの普及に伴い紙の書籍全体の売り上げが減少している。その代わりに電子書籍の需要が増えてきており、教育出版業界の中でも電子書籍での販売やインターネットで英語の音声が聞ける付録付きを販売することが増えている。学校でもデジタル教材を取り入れた学習をする機会が増えているためデジタル化に伴い教育教材出版業界はこれからも変化していくと予想される。

教材の本質を見抜いていくこと

株式会社文溪堂
島川 裕太 氏
編集部
2018年度 法学部 卒業

教育の場によりよいものを

 本学のOBである島川裕太さんは現在、文溪堂の編集部に所属し、ICTの企画の立案や制作を担当している。文溪堂では、子どもたちの学習教材であるテストやドリルの製作だけでなく、教材に付随する付録や、教師の業務軽減を目指したソフトの開発も行っている。編集部の、同じICTチームの人たちとの会議や、ソフトの機能の提案が主な仕事内容ではあるが、一日のスケジュールにおいて大部分を占めるのが、企画の立案である。島川さんは、自身の使命として二つのことを挙げた。一つが子どもたちの教育に携わること。もう一つが教師の業務軽減を目指すこと。この二つの使命を原点とし、変わりうる時代の変化とともにこの先も長く使われる教材を目指して、日々、ソフトの企画検討に注力している。
 島川さんは、入社1,2年目に担当した、小学校6年生の国語のテストがとても印象深いものとなったそうだ。編集する教材の問題を解くことは容易だが、その学年に適した問題であるのか、解き方はすでに習っているものであるか、などを考慮しながらテストを作成しなければならない点が難しく、苦労を重ねられたそうだ。このように困ったときどのように対処したのかを島川さんに問うたところ、「すべて一人で抱え込むのではなく、人に相談することは大切だ。それは恥ずかしいことでなく、ミスを防止するうえでも必要なことである。」と島川さんは話す。ただ、失敗の原因を探ることは最低限やらなければならないことであり、それが自分を成長させる原動力となる。このことを働いてみて実感したそうだ。

自己分析から見える人生の分岐点

 島川さんに就職活動の際に苦労したことを伺うと「自己分析」と答えた。自分のことは理解しているつもりでも、それをいざ第三者に伝えようとすると難しい。島川さんは自己分析をしていくために、周囲の人たちに自身について聞いてみたという。自分は、どのようなところが強みなのか、弱みなのか、それこそ在学中にキャリアセンターに相談したこともあり、他己分析をしたことで自身では見えない点を知ることができたと語ってくれた。
自己分析を行っていくことで、どんな人生を送ってきたのか、どんな人物なのか、武器は何なのかなど自分の強みをより理解していくことになる。経験してきた出来事に対してどう感じたのか、なぜそう思ったのか。その「なぜ」を問い詰めていくことで、自分を作る根本に出会えるという。
 さらに、「就職活動は情報社会」だと島川さんは言う。様々な情報が溢れかえっており、焦ったり、不安になったりしたと当時を振り返った。そこで必要なのが、自分を強く持つこと。不安や焦りから自分自身を見失うこともあるかもしれないが、揺らがない自分を作っていくことが就職活動をしていく中で重要な姿勢になってくるという。
 島川さんは文溪堂が第一志望であったというが、文溪堂を志望したきっかけも自己分析からだったと語った。就職活動において明確な目標がなかったという島川さん。自己分析を進めていく過程で、人生のターニングポイントを見つけた。小学生の時に、文溪堂主催の読書感想文コンクールに入賞したことで自信がついたという。島川さんの人生を変えていく重要なポイントになった文溪堂の存在は、一人の子供だけでなく、全国の子供を支えるきっかけになれる。それを実現できるのが文溪堂だと思い、それが強い志望動機となった。
 自分自身について理解していると思い込んでいても、まだ知らない自分が眠っている。そんな未知なる自分と出会うために、時間のある大学生活の中で自分を見つめ直してみてはどうだろうか。

教材の本質を見つめていく

 昨今、教育現場では生徒一人に一台タブレットが配られるようになるなどとデジタル化が進んでいる。漢字ドリルや計算ドリル、資料集などの紙媒体での教材が主流である学校教材もその影響を受け、文溪堂の製品もデジタルで対応されたものが増えた。
 デジタル化が進むことをどう感じているか。島川さんに伺ってみたところ「デジタルが教育現場でどこまで求められているのかを考える」と述べた。実験動画や360度の写真が見られるようになるなど、これまでの紙の教材では出来なかったことがデジタル化によって可能になった。しかし実際には、教師の負担増大や子供たちの学びに確実に定着するのかなど問題点や不安点が生じている。教材のデジタル化はメリットばかりではない。
 「教材の本質を見抜いていくこと」島川さんは、取材中この言葉を何度も口にしていた。デジタル化が進んでいっても重要なのは教材の中身、つまり「問題」である。この問題は、教師が考えた問題やこれまでの文溪堂の歴史が積み重なったものであり、そのノウハウを持っているのが文溪堂の強みであると語った。デジタル化で変わるのは、媒体だけであって中の問題は変化しない。文溪堂にとってデジタル化は、チャンスであると島川さんは語った。
今後、教育現場ではますますデジタル化が進んでいくだろう。しかし、教育で大事なのは「何で」学ぶかではなく、「何を」学ぶかであると今回の取材の中で改めて感じた。



変化に柔軟な企業

 昨今の出版業界の状況が芳しくない中でも文溪堂は長年の歴史を通して蓄積したノウハウを活用することで時代に合わせた商品を提供する非常に柔軟な考えを持っている企業である。児童向けの学習教材の他に先生方の業務軽減を目的としたTe-Comp@ssという支援システムは働き方にも大きな影響を与えている。積極的に挨拶を心がけ、他部署間で意思の疎通を図る姿勢は風通しの良い企業であることを物語っており、また会社の一員として責任感を持って働くことで達成感を味わえる職場でもある。デジタル化による媒体の変化が及ぼす影響は大きいが、学習教材の本質を捉え、子供目線に立ち客観的な意見を持つことで長年愛用される教材を今後も幅広く展開していくと考える。


チーム紹介

今井 ひなの (地域政策学部2年)
江坂 友貴  (経営学部2年)
澤田 香凜  (経済学部2年)
中島 彩伽    (現代中国学部1年)

※本記事は2021年10月現在の内容となります。