viewpoint 業界
日本には数多くの鉄道会社が存在するが、それぞれの地域で人々の移動の担い手として「なくてはならない存在」になっている。また、大手私鉄を中心に事業の多角化を図っており、沿線を中心に人々の生活に密着した様々なサービスを提供している。例えば、鉄道移動を補完するためのバス・タクシーなどの交通事業、沿線を活性化させるための不動産事業やレジャー・ホテル事業などを展開している。
これには鉄道会社ならではの歴史的背景がある。戦後の高度経済成長期に入ると、鉄道会社は攻めの姿勢に打って出る。好況下の環境において、もっと鉄道を利用してもらうにはどうしたらいいのか、もっと多くの人を沿線に呼び込めないか、もっと住みやすい地域にできないかということをそれまで以上に真剣に考えるようになったのである。その結果、沿線の定住人口を増やすための宅地開発が進み、同時にそこに住む人たちに向けて生活関連サービスを提供するようになった。また、鉄道の利用目的を創出することにも注力した。鉄道会社系列のテーマパークや遊園地が公共交通機関でアクセスしやすい場所にあるのはこのためである。
そのような経緯から、特に大手鉄道会社の経営規模は拡大された。地元の名古屋鉄道(以下、「名鉄」)グループは約130社で形成されており、近畿日本鉄道なども傘下に多くのグループ会社を有している。
近年はインバウンドが増加するという追い風が吹いており、鉄道各社はその対応を積極的に行っているほか、東京スカイツリーやあべのハルカスに代表される開発事業も話題となっている。
viewpoint 企業
名鉄は歴史の長い鉄道会社であり、1894年に愛知馬車鉄道株式会社として始まった。1921年に名古屋鉄道株式会社と社名を改め、現在に至る。愛知県、岐阜県を基盤とする会社で、鉄道の路線距離は444.2キロと大手私鉄16社の中で3番目に長い。
中部圏を中心に名鉄グループを形成しており、名鉄バス㈱や名鉄運輸㈱、名鉄観光サービス㈱など、約130のグループ会社の中核的存在である。グループ会社は多種多様な事業を展開しており、造園業や機内食の製造、輸入車の販売などを行っている会社もある。
名鉄グループの営業収益(売上)は約6,200億円であるが、その8割以上はグループ会社の営業収益であり、総合力の高いサービス企業集団であると言える。この地域に住んでいる人にとって、名鉄は身近な存在であり、電車に乗ること以外でも名鉄グループのサービスを利用することが多いのではないだろうか。
また、名鉄は地域貢献活動にも力を入れている。沿線自治体と連携して地域が盛り上がるような企画を数多く催しているほか、各駅で中高生の職場体験実習を受け入れたり、地元の小中学校に足を運んで安全教育を実施するなどの活動を行っている。