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所在地愛知県名古屋市中村区名駅一丁目2番4号
創業1894年6月25日
代表者取締役社長 安藤 隆司
従業員数5,086人(2019年3月31日現在)

viewpoint 業界

 日本には数多くの鉄道会社が存在するが、それぞれの地域で人々の移動の担い手として「なくてはならない存在」になっている。また、大手私鉄を中心に事業の多角化を図っており、沿線を中心に人々の生活に密着した様々なサービスを提供している。例えば、鉄道移動を補完するためのバス・タクシーなどの交通事業、沿線を活性化させるための不動産事業やレジャー・ホテル事業などを展開している。
これには鉄道会社ならではの歴史的背景がある。戦後の高度経済成長期に入ると、鉄道会社は攻めの姿勢に打って出る。好況下の環境において、もっと鉄道を利用してもらうにはどうしたらいいのか、もっと多くの人を沿線に呼び込めないか、もっと住みやすい地域にできないかということをそれまで以上に真剣に考えるようになったのである。その結果、沿線の定住人口を増やすための宅地開発が進み、同時にそこに住む人たちに向けて生活関連サービスを提供するようになった。また、鉄道の利用目的を創出することにも注力した。鉄道会社系列のテーマパークや遊園地が公共交通機関でアクセスしやすい場所にあるのはこのためである。
そのような経緯から、特に大手鉄道会社の経営規模は拡大された。地元の名古屋鉄道(以下、「名鉄」)グループは約130社で形成されており、近畿日本鉄道なども傘下に多くのグループ会社を有している。
近年はインバウンドが増加するという追い風が吹いており、鉄道各社はその対応を積極的に行っているほか、東京スカイツリーやあべのハルカスに代表される開発事業も話題となっている。

viewpoint 企業

 名鉄は歴史の長い鉄道会社であり、1894年に愛知馬車鉄道株式会社として始まった。1921年に名古屋鉄道株式会社と社名を改め、現在に至る。愛知県、岐阜県を基盤とする会社で、鉄道の路線距離は444.2キロと大手私鉄16社の中で3番目に長い。
中部圏を中心に名鉄グループを形成しており、名鉄バス㈱や名鉄運輸㈱、名鉄観光サービス㈱など、約130のグループ会社の中核的存在である。グループ会社は多種多様な事業を展開しており、造園業や機内食の製造、輸入車の販売などを行っている会社もある。
名鉄グループの営業収益(売上)は約6,200億円であるが、その8割以上はグループ会社の営業収益であり、総合力の高いサービス企業集団であると言える。この地域に住んでいる人にとって、名鉄は身近な存在であり、電車に乗ること以外でも名鉄グループのサービスを利用することが多いのではないだろうか。
また、名鉄は地域貢献活動にも力を入れている。沿線自治体と連携して地域が盛り上がるような企画を数多く催しているほか、各駅で中高生の職場体験実習を受け入れたり、地元の小中学校に足を運んで安全教育を実施するなどの活動を行っている。

名鉄で活躍中の先輩

名古屋鉄道株式会社 
服部 裕佳子 氏
総務部 サブリーダー 
2010年3月 現代中国学部 現代中国学科卒業

名古屋鉄道株式会社
岩田 美祐 氏
人事部 サブリーダー 
2018年3月  法学部 法学科卒業

実務のエキスパート「ビジネスキャリア職」

 今回取材させていただいた本学OGの服部裕佳子さん、岩田美祐さん(以下「服部さん」、「岩田さん」)のお二人はビジネスキャリア職として活躍されている。ビジネスキャリア職とは、オフィスで働く機会の多い職種である。鉄道会社と聞くと、真っ先に駅などの現場で働いている人が思い浮かぶが、実際にはいろいろな働き方があり、それが積み重なって日々の安全運行につながっている。ビジネスキャリア職は、財務・総務・不動産・ITなど専門性が求められる分野を比較的長い期間経験することで、その分野のエキスパートとして活躍する職種である。
OGのお二人にビジネスキャリア職を志望した理由を聞くと、岩田さんは「転居を伴う異動がなく、安心して働くことができるから」、「専門知識を高めることができるため」と仰っていた。転居による家族への影響がなく、また特定の分野に精通することで育児休業などから復帰しやすいため、この職種の多くが女性だという。実際、服部さんにおいては育児との両立をなさっており、「このような恵まれた環境で働けることに感謝しています。」と仰っていた。まさに女性の結婚や出産に寄り添った職種で、今の時代にマッチしていると感じた。
服部さんは受付業務の責任者という立場でマネジメントをされているほか、社員証の発行・管理業務などを担当されている。一方、岩田さんは定年退職する人たちに対してマネープランの説明をして相談にのるなど、退職金の支払いに関する業務を担当されている。


責任感と連帯感

 そんなお二人に仕事をする上でのモットーを教えていただいた。服部さんは、「注意深く、そして常に考えながら仕事をすること」であると仰っていた。服部さんが担当する業務はどれもミスが許されない仕事であり、正確に遂行することが求められるそうだ。
入社して間もない頃、服部さんは上司の方から「完璧に仕事ができて、やっと0点になる」という言葉を受け取ったそうだ。これは、通常の仕事はできて当たり前、そこに服部さんならではの付加価値をつけなければ点が付かないという意味だということだ。それにより服部さん自身、仕事を作業としてこなすのではなく、その仕事の目的やどうしたらよりよい仕事になるのかを考えるようになったということを伺った。
一方、岩田さんは「周りとの連携を大切にすること」であると仰っていた。学生時代は自分一人で何事にも取り組むことが多かったというが、名鉄に入って仕事をしていく中で、一人でできることには限りがあることに気づいたと仰っていた。幸いにも岩田さんの職場はコミュニケーションをとりやすい雰囲気があり、皆で一丸となって仕事を進めているそうだ。また、仕事の中で多くの方のスケジュールを管理することもあり、自分の仕事に対して強い責任を感じているとも仰っていた。
お二人の話しを伺う中で、名鉄で働く人の仕事に対する矜持のようなものを感じた。

必要とされる「人材」とは

 名鉄は次々と新たなことに取り組んでいる。まずは、名古屋駅周辺の再開発だ。2027年に名古屋・東京間をリニア中央新幹線が開通する予定になっている。それにより、名古屋と東京は約40分で結ばれる。名鉄はこれを機会と捉え、名古屋駅周辺をより魅力的な街に変えていくということを発表している。同時に、駅やバスセンターを改修してより便利で快適な移動を実現するということだ。
また、沿線地域の価値創造に向けて新たな分野に積極的に参入している。ここ数年の間に、リハビリ型デイサービスを提供する会社や小規模保育を行う会社を新規に立ち上げ、サービスの提供を開始している。
このように、日々進化を遂げていく名鉄に必要とされる人材について、人事部の加地寛行さん(以下、「加地さん」)に話を伺った。加地さんは「変革をリードしてくれるような強い熱意と責任感持った人」を必要としていると仰っていた。服部さん、岩田さんも実際に地域に貢献したいという強い想いと責任感を持って仕事に取り組んでいる。また、お二人の周りには、現状に満足することなく次々と新たな課題へと取り組んでいく、そんな向上心を持った社員の方が多くいるそうだ。社員一人一人の強い熱意、責任感によって名鉄が日々進化しているということに気づかされた。
そんな名鉄で、また社会で必要とされる人材に近づくため、今の私たち学生にできることはあるのかということについてもお話を伺ったところ、今のうちから自分の将来を真剣に考え、目標に向って努力することが重要であると仰っていた。また、時間に余裕のある学生時代だからこそできること、例えば本を読んで教養を身に付けたり、行ったことのない土地を訪れたりすることが将来何かの役に立つかもしれないということも伺った。
服部さん、岩田さんも学生時代に勉強したこと、経験したことが今の仕事に活きているそうだ。

地域に寄り添う「名鉄」

column 発見

 近年、犬山市の観光客数が増加傾向にあることを知っているだろうか。SNSにも若者を中心として犬山の写真が数多く投稿されている。実はこれには名鉄が深く関係している。
名鉄は数年前から犬山市観光協会などと連携し、犬山城下町の魅力を積極的に発信するとともに、城下町のお店で使える割引券と電車の切符がセットになったお得な企画切符の販売を行ったりしてきた。
その結果、犬山城下町の新たな魅力が発見され、若者を中心に多くの観光客が訪れるようになったのだ。また、名鉄は犬山市の他にも沿線の碧南市や半田市、有松地区などの魅力も積極的にPRしている。このように名鉄は沿線地域に人を積極的に呼び込むことで、鉄道の利用促進を図りつつ、地域を発展させるという相乗効果を生み出している。

名鉄はこれからも鉄道という公共交通を中心に地域に貢献し、地域とともに発展していきながら、利用者のココロに届くサービスを提供していくだろう。



チーム紹介

加藤 楽音(地域政策学部 1年)
平林 将一郎(経営学部 1年)
鈴木 由梨乃(現代中国学部 1年)
村雲 果緒利(法学部 1年)

※本記事は2019年12月現在の内容となります。