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所在地愛知県名古屋市熱田区桜田町19番18号
設立1922年6月22日
代表者冨成 義郎
従業員数2759名(2019年3月末日現在)

viewpoint 業界

 インフラ業界とはガスや鉄道といった私たちの生活になくてはならないものを提供する業界だ。エネルギーの自由化と叫ばれる時代、都市ガス業界でも2017年に都市ガスの小売り全面自由化が開始された。以前は、ガス管の管理やガスの供給はその地域の会社のみが行っていた。
しかし、小売り全面自由化になったことで一般家庭でもガス会社を選択できるようになった。これにより参入企業が顧客を巡り、激しい価格競争やサービスの拡充が行われ、よりお客さまに寄り添ったエネルギーが利用できるようになると言われている。
そして業界の売り上げシェア率にも大きな変化が現れた。自由化が起こる前は、いわゆる四大都市ガス(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガス)の売り上げシェア率が全体の80%も占めていたのである。
しかし企業が新たに参入したことで、その他のガス会社及び新規参入企業の割合がたった2年で11%も増加したのである。四季報によるとこの数字は今後も増加すると予想されている。
これらのことから今後も競争が活発になり、ますます目が離すことができない、また生活に密着しているからこそなくてはならない業界である。

viewpoint 企業

 東邦ガス株式会社[以下「東邦ガス」]
東邦ガスは名古屋市熱田区に本社を構え、東海三県を中心にガスの供給を行っている。そんな東邦ガスだが、2017年度から始まった都市ガス小売り全面自由化の影響を受け、ガス販売量が減少。販売量減少の理由の1つとして、ガス事業を主としない企業がガスの供給を始めた事で、企業のガス売り上げシェア率に大きな変化が現れた事が挙げられる。しかし東邦ガスは自由化の影響を受けて、さまざまな取り組みを行った事で、徐々に功績を取り戻しつつある。取り組みの例としてここでは2つ紹介する。
1つ目は、ガス事業を第1とする東邦ガスが電力事業やまちづくりを始めとする新規事業への取り組みに本腰を入れ、エネルギー事業だけではない会社としての可能性を広げようとしていることである。
2つ目は、防災対策のさらなる強化だ。東邦ガスは、地域の安全を守り続けるべく、災害に備えたシステムの整備や監視を24時間365日休むことなく行っている。また、ガス製造拠点において津波の対策や、自家発電設備の増設なども行うことで、地震時や停電時において、ガスが使えないという状況に陥らないようにしている。エネルギーの自由化により大きなダメージを受け、厳しい状況であると私たちは思い込んでいた。
しかし東邦ガスは実際、この現状が会社を大きくさせる、自社にとってプラスな機会と捉えている。
また東邦ガスは、新規卒業者を45人程度(大学院卒、学部卒の合計)しか採用しないのである。この事は1人の意見が会社全体を動かし、仕事にやりがいを感じる事に繋がる。また、人材育成にも力を入れている為、入社後もやる気次第でどこまでも成長できる環境が備わっている。言い換えれば、東邦ガスは、社員全員が精鋭として前線で働く事ができ、少人数の戦いの中で日々成長する事ができる職場なのだ。

未来を拓き、挑戦する精鋭たち

東邦ガス株式会社 
安井 克弥 氏
リビング営業部 営業第三グループ 
2015年度 法学部 卒業

NOT 受け身 BUT 挑戦

 愛知大学OBの安井克弥さん(以下「安井さん」)は2015年に法学部を卒業され、現在はリビング営業部に所属されている。安井さんは、生まれ育った名古屋に貢献できること、そして、工場やお店に関係なく地元の人がお客さまになり、その人たちに喜んでもらえる仕事がしたいという思いから東邦ガスに入社しようと決めたそうだ。また、安井さんの学生時代に取り組んだことと我々学生がいまやっておきたいことのアドバイスをくださった。それは、小さなコミュニティにとどまらず、様々なコミュニティに属することである。安井さんは友達や愛知大学の輪に留まらず、他大学生との交流や長期インターンシップに積極的に参加していった。この経験からいろいろな価値観や新たな物の考え方を育み、今の自分があるという。安井さんは、我々学生が愛知大学の垣根を超えた、身近なコミュニティにアルバイトを挙げられた。アルバイトという組織に属することで、安井さんが学生時代に学んだことを体験できるほか、目上の方と関わりを持つことができるとおっしゃっていた。また、自分自身の考えを発信することを心掛けていたそうだ。例えば講義等で受動的に教授の話を聞くのではなく、常に自分の意見を言えるように考えていた事などが言える。その意見を他者に発信できるか、できないかは自分次第だと私たちに教えてくださいました。

他企業との差異

 東邦ガスの働き方の面で、他企業との差異のうちの一つは、ワーク・ライフ・バランスを重視している点である。休みを取得しやすく、業務のメリハリを大切にしていると安井さんは言う。また、限度を超えた長時間の残業ができない仕組みになっていると伺った。これは会社として従業員を守るだけでなく、休暇を取得しやすい風土を醸成し、適度なリフレッシュを大切にして欲しい。心身ともに元気な状態で仕事に励んでもらいたい。プライベートも充実してこそ良い仕事ができるという会社の想いだそうだ。安井さんは、ハネムーン休暇制度を使って、結婚時に休暇を取得したり、年に一回夏休みとは別に、平日に連休をとる制度を利用したり、振替休日を活用することで、土・日曜日よりも安い値段、人が少ない環境で奥様と旅行等をしているとおっしゃっていた。

お客さまと同じベクトルで挑戦

 安井さんは、働く中で失敗から学ぶことがあったと言う。お客さまが利用している他社のプランと東邦ガスのプランを比較して、安さやサービスの良さを訴え、自社のプランを提案されたそうだ。しかしお客さまは、「いくら安くてもプランを変える気はない。安さなどではない、その会社との付き合いなどの関係で決めている。」と言う。安井さんは、過去の経験から得た先入観から、お客さまが商品・プランに求めているのは安さや良いサービスだと決めつけてしまったことで、お客さまとの意見が食い違ってしまった。この失敗から、お客さまとはひとくくりにまとめられない、十人十色であることを痛感した。お客さまから求められているものをしっかりと明確にする大切さを学んだそうだ。安井さんのお言葉を借りると、「お客さまと同じベクトルで仕事を進めること」の大切さと「お客さまの立場に寄り添った営業」を学ばれたということだ。失敗から大いに飛躍を遂げられた安井さんの働く上でのモットーは、「常に楽しむ」だそうだ。やはり、日々の仕事ではつらいこと、苦しいこと、やりたくないこともある。しかし、やらない、避けるという選択をするのではなく、そのつらいことの中でどうすれば楽しくなるのかを考えて仕事に取り組んでいると教えていただいた。また、安井さんは感謝されることが多いこの仕事にやりがいを感じていらっしゃった。安井さんは実際に、お客さまがお盆の暑い日に引っ越しをする時、引っ越し先の家にガスの開栓作業に立ち合いに伺うと、お客さまから「こんな暑いお盆の連休の真ん中の日にわざわざ来てくれてありがとね。」と言われたそうだ。そして、去年大阪で地震が起きた際、他ガス会社の応援で現地に赴いて一軒一軒ガスを開けた時にも感謝されたとおっしゃっていた。これは、ガスという日常生活になくてはならないものを扱う東邦ガスに勤めた故のやりがいである。
そして、安井さんに将来のビジョンを伺ったところ、地域のエネルギーショップと関わる仕事をしてみたい、そして、都市ガスの営業を一通り網羅した後に、営業の戦略を考え、営業する人が営業しやすいキャンペーンや今まで以上にお客さまに寄り添ったサービスを考えるスタッフになりたいとおっしゃっていた。


変わりゆく業界

column 発見

 エネルギーの自由化により企業の在り方にも変化が訪れた。ここでは東邦ガスが取り組んでいる最新事例を交えてガス業界の動向を紹介する。
ガスを安定供給することが大切な使命だったが、自由化により従来のガス事業だけでなく、新規事業への取り組みや業界を超えた企業とのアライアンスなどを進めている。
例えば、アメリカのベンチャー企業と世界初となるAIを活用したガス管劣化予測の共同実証や社内公募制度の開始。(若手社員から新規事業のアイデアを募り、審査をするもの。)これにより、エネルギー事業者として安定供給と安全・安心を確保するための保安対策をより進めることができるそうだ。また、新たな可能性としてほかの業界の企業と新たな取り組みを始めた。
ネクスコ中日本と組むことで災害時の円滑な相互連携に加え、平常時から、災害を想定した訓練などをおこなうことによって、災害時に被害が発生した道路や都市ガス供給の迅速な復旧作業を行うことができるという。
このように私たちの生活に密着しているからこそ可能性の幅が広く、異種業界と組み業界の枠を超えた事業を展開することができるのもインフラ業界の魅力の一つではないだろうか。


チーム紹介

犬塚 成哉 (現代中国学部1年)
野崎 裕加 (経済学部2年)
梶  雅紀 (経済学部1年)
島谷 海璃 (経営学部1年)

※本記事は2019年12月現在の内容となります。