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所在地愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号
設立1992年12月25日
代表者代表取締役社長 山田 正男
従業員数1033名
(2017年3月1日現在)

viewpoint 業界

 小売業界に属している百貨店業界は日本で明治時代から親しまれ、時代とともに変容を遂げ幅広い年代が利用するようになった。時代における消費者ニーズに応え、これまで消費者の生活を支えてきた。

 数年前は、若者の百貨店離れや郊外型ショッピングモールの台頭、金融危機により業界成長は停滞したが、近年、インバウンド需要や消費者の購買意欲の向上、増税前の駆け込み需要により成長をみせている。

 現在、百貨店業界内の各企業は、海外にもビジネスの可能性を追求しており、アジア各国で出店を実現している。そのほかにも“脱百貨店”という新体制で新たな試みを目指す企業も出てきた。2017年4月にはJ.フロントリテイリングがGINZA SIX を展開し、新たな話題を呼んでいる。

 しかし、今後の国内人口の減少や消費動向の変化による成長低迷の懸念や、さらにはIoTの注目、インターネットの普及によるネット通販の大幅な成長への対応が課題となるだろう。現在、ネット通販を立ち上げる企業はあるものの浸透率が低いことが問題であり、今後、インターネット社会で生き残るため新たな試みや再編、リニューアルなどの動向に注目が集まっている。

viewpoint 企業

 株式会社ジェイアール東海髙島屋はJR東海を親会社とし、2000年3月15日にジェイアール名古屋タカシマヤを開業。2017年4月に新たにタカシマヤ ゲートタワーモールを開業した。ジェイアール東海髙島屋は、名古屋駅に立地しており独自の買い物環境を提供している。例えば、休憩スペースをフロアの中央に設け、視認性(見通し)を高め、ゆとり空間を実現している。開業当初からダブルエスカレーターを導入し、お客様の移動を快適にした。また、毎年開催している22億円もの売上げを誇るバレンタイン催事、アムール・デュ・ショコラは名古屋の方だけでなく全国各地から訪れる方も楽しめるよう大々的に行っている。2017年9月に開催されたフランス展では、現地フランスまで交渉に行き、日本にあるフランス商品ではなく、本場の商品、本場の料理を本場のシェフの調理で提供した。

 社風としてCS=ES、つまり従業員が満足していなければお客様に満足してもらえるサービスを提供できないという考えのもと、社員一人一人の自己実現を大切にしている。来場されたお客様がネット販売では感じられないような良質なサービスを五感で感じとってもらえるよう心掛けている。また、お客様に満足していただけるよう、社員だけでなくお取引先の方も一緒にチームとなって目標達成を目指している。そして、現状に満足せずに常に向上心を持って挑み続けている。

『人生で一番成長できる場所』

株式会社ジェイアール東海髙島屋
犬飼 奈津子 氏

販売促進部 統括グループ 広報
2002年度 経営学部 卒業

“笑顔笑声”

 本学OGの犬飼奈津子さんは、ジェイアール東海髙島屋の販売促進部において広報担当をしている。入社当初はランジェリー売場の接客販売や催事担当を任され、その後婦人服の催し物を企画するグループへ異動し、入社5年目から現在に至るまで10年以上広報担当として取材交渉や取材対応を行っている。

 犬飼さんは“笑顔笑声“をモットーに仕事に取り組んでいる。日々仕事を共にするマスコミの方には、時には忙しくて取り合ってもらえない場合もあるが、相手の優れた点を見るよう常に心がけ、決して相手に対して苦手意識を持たないよう心がけている。また、新入社員時代は失敗をする度に会社に行くのも憂鬱なほど何日も落ち込むことが度々あった。しかしずっと引きずることで次のこともうまく果たせなくなるので、失敗してもそれを引きずらないよう心がけ、しっかり反省をしたあとは直ぐに切り替えられるよう訓練と鍛錬を積み重ねてきた。この訓練と鍛錬への努力は計り知れない。

 様々な面で活躍されている方の共通点は”コミュニケーション能力・向上心・チャレンジ精神“のある人だと伺ったが、3つのどれも犬飼さんは持ち合わせているように思える。株式会社ジェイアール東海高島屋人事部の鞍本さんと犬飼さんが声をそろえて働く上で重要だとおっしゃったのは”一生懸命に取り組むこと“であった。一生懸命に一つ一つこなしていくことで周囲の人も協力してくれるようになり、結果を出すことができる。すると更に大きな仕事が任され声をかけてもらえるようになる。

 売場で販売をしていた時代は若手社員にどんどん仕事を任せていく社風に戸惑いつつ、顧客に掛け合う姿勢と愛嬌が評判を呼んだ。販売促進部に異動した後は、いかにメディアにジェイアール東海髙島屋を取り上げてもらうか研究しながら、注目を浴びるような情報を発信し、全国での知名度を上げるため日々奮闘している。

“責任ある仕事だからこそのやりがい”

 販売員時代は、新入社員でありながらも入社半年後には1コーナーの仕入れ発注を任され、さらに半年後には何千万円もの売上げを出す催事の運営を一から任された。大きな仕事にはそれだけの苦労を伴うが、その分大きな達成感を得られる。このような、若手社員に責任ある仕事を任せる、というものは、今現在のジェイアール東海高島屋でも受け継がれている社風だ。この社風があるからこそ、若手社員も仕事にやりがいを感じられ、成長していけるのだ。

 この経験を経て、犬飼さんは販売促進部の広報に配属となった。
広報は広告とよく混同されるが、広告はコストを払い広告枠を得るのに対し、広報はメディアに情報を発信してメディアを通じて会社の情報を発信してもらう。そのため、メディアにとりあげてもらえるように催事などの情報を売り込みに行かなくてはならない。ほかの企業も同じように自社の情報を売り込みに来ているので、その中でいかに自社の魅力を出し、他の情報と差をつけ、限られたメディア枠を得るかが重要だ。この部分が広報の仕事の中で一番大変なことだそうだ。催事の情報がメディアに取り上げられ、多くの人の目にとまると売上げにも大きく左右する。2017年夏に開催されたフランス展では、企画担当者がわざわざ現地へ出向きレストランに出店交渉をしにいった。その交渉の様子から取材してもらうようテレビ局に提案し、長い時間枠でテレビ放映された。ジェイアール東海高島屋の広報は名古屋の全テレビ局をまわるそうだ。そして、取材のオファーがあれば急な依頼であっても快く引き受ける。そのため連日多くのメディアから取材依頼があり多忙な日々を送っている。広報の方々の労力を惜しまない姿勢がジェイアール東海髙島屋の売上げを支えている。仕事の話をしている時の犬飼さんの笑顔は輝いていた。仕事に多くの苦労はあるものの、それ以上のやりがいを感じられている、ということが伺えた。

“新たな挑戦”

 犬飼さんは二児の母親として、家事や育児をしながら仕事の両立を図っている。母親として今後どのように仕事を続けていけるかという課題の整理をしている。ジェイアール東海髙島屋では犬飼さんのように子どもを育てながらキャリアを持ち、活躍している女性は多く、仕事を楽しみながらも私生活も充実している人が多いという印象を受けた。

 仕事面では、今後、広報グループをさらに強化するためにどうしたらいいかを考えている。もっとメディアに取り上げられ露出が増えることで、集客を更に増やすことができる。そのためにも広報の体制を強固にすることが必要で、時に組織を改善するための訴えかけを会社にしている。広報としてまだまだできることがあると感じていると仰っており、その現状に満足せず常に挑み続ける姿勢を見習いたいと強く感じた。

『社員の育成=会社の財産』

column 発見

 ジェイアール東海髙島屋は社員の育成こそが会社の財産となるという考え方のもと、社員向けの様々な研修が行われている。新入社員研修だけでなく、入社後でも受講できる研修が3つある。年次に応じた知識やスキルの習得を目指す「階層別研修」や、社員として営業現場での必要不可欠な基礎知識の習得を目指す「専門能力研修」社員自身が学びの場を自分自身で選択して長所の育成や課題の克服を図る「自己啓発研修・ローズセミナー」がある。自己啓発研修・ローズセミナーは、アルファベットを読めない人でも英語が上達する「カタカナ英語講座」や、消費者のライフスタイルを想像する能力を養う「ライフスタイル発想講座」百貨店教養編では「浴衣着付け講座」や「進物体裁講座」など毎年多種多様な講座が開かれている。このような、育成プログラムの充実こそがジェイアール東海髙島屋の良質なサービスを生み出しているのだ。社員の育成を惜しまず、日々、よりよい接客サービスを探求する姿勢が、企業としての歴史は浅いながらも多くの人々に支持される秘訣だろう。

チーム紹介

颯田 実紅(経営学部 2年)
伊藤 瑞希(国際コミュニケーション学部 1年)
伊藤 清里菜(現代中国学部 1年)
小野村 佳奈子(現代中国学部 1年)

※本記事は2017年9月現在の内容となります。