文字サイズ
所在地大阪市中央区本町4丁目1-13
設立1610年
代表者取締役社長 宮下 正裕
従業員数7,307名
(2017年1月現在)

viewpoint 業界

 建設業とは、ビルやマンションから商業施設、道路、橋梁、湾港、空港などの大型公共設備まで様々な建築物の工事を請け負い、完成に繋げていく事業を展開している。

 建設業者には、発注者から土木工事一式・建築工事一式を直接請け負うゼネコン(総合建設業者)とゼネコンに協力して施工にあたるサブコン(専門工事業者)に分けられる。

 建築物を建てるには、発注者が設計事務所やゼネコンに設計依頼を行うところから始まり、設計後はゼネコンやサブコンが工事を施工する。このような流れで身のまわりの建築物が作り上げられている。

 建設業界はいま、東日本大震災の復興や2020年の東京オリンピックの影響から首都圏を中心に再開発が進み、高層ビルや新築マンション、商業施設などの建設ラッシュが続いていており、強い追い風をうけている。そのため期待が高まりつつある。一方で、東京オリンピック後は建築需要の減速が予想され、積極的に海外事業を強化する動きが見られる。

viewpoint 企業

 1610年に名古屋で創業した株式会社竹中工務店。業界のけん引役である5大スーパーゼネコン(売上高1兆円規模の建設会社)の一角を占める。2010年に創業400年を迎えた今でなお、『最良の作品を世に遺し社会に貢献する』の経営理念のもと日本のみならず、世界にもまた展開する大手総合建設会社だ。創業以来、建築を専業としランドマークとなる多くの建築物を手掛け、社会発展の一翼を担っている。

 竹中工務店は創業以来、建築とは生命や財産を守る器である以上に社会の資産であり、その時代の文化を後世に伝え継ぐものであると考えている。このような仕事に携わる誇りを込め、手がけた建築物を「作品」と呼んでいる。また、スーパーゼネコン5社中唯一非上場方針を採用しており、これにより利益追求を第一とした経営でなく、お客様が納得のいく作品づくりを行ってきた。竹中工務店の作り上げてきた作品は数え切れないほどある。気がつかない間に誰もが目にしているだろう。

自らの想いが作品として生き続ける。

株式会社竹中工務店
堀 恵利加 氏

生産統括部工務部門(名古屋地区施工事務グループ)
2013年度 経営学部 卒業

仕事での学びを今に活かす

 2014年愛知大学 経営学部 卒業の堀恵利加さんは、竹中工務店の名古屋地区FM(ファシリティマネジメント)センターの施工事務としてご活躍されている。堀さんが大学時代に本学から見た名古屋駅周辺の景色に感動され、町の発展にかかわりたいという強い意志を持った。そして、学内セミナーや会社説明会を通じて、人事やOBOGの方々から、幅広い意見を聞くことによって、「より自分の理想に近い職に、つきたい。それこそが竹中工務店だ。」と決意された。

 堀さんの勤務する作業所は、建物内に入居されているテナントの入れ替え工事や建物の電気・空調といった設備の改修工事、故障個所の補修工事などをお客様より請負っており、工事内容ごとに施工会社と協業し、工事を進めていく。主に名古屋駅周辺の作品に携わっており、お客様の数も多い為、対応もそれぞれ異なる。中には昭和中期の作品もあり、その作品ごとの様々な要求に迅速に対応しながら、お客様の課題を解決している。まさに、会社の最前線である。

 その中で、堀さんの業務は、円滑に工事を進めるために欠かせない役割を担っている。具体的には、工事費の見積をはじめとする書類作成や、利益の管理であり、様々な部門の垣根を超えた調整事項や問題が生じ、解決の必要が生まれてくる。そこで、大学時代に一生懸命に取り組んだゼミでの研究活動が活きてくる。ひとつの問いに対して、より追究して継続性や集中力を培うことができたので、様々な課題を解決する様々な課題を解決する上で、楽しんで仕事に取り組むことができると語ってくれた。また、事務所内だけで仕事をするわけでなく、実際に作業所に赴き、工事の進捗状況を確認するなかで、工事担当者から、わからない建築用語を説明してもらい、自分の知識を増やし、視野が広がると、現場の状況をより把握しやすくなる。そのような経験こそがお客様のニーズの理解や把握に繋がり、最良な作品をつくりあげているのだろう。

仕事も一つのチーム

 竹中工務店はひとつの作品を作り上げるのに社内外の多くの人がかかわっていると堀さんは語ってくれた。

 ここでキーワードとなってくるのが、『コミュニケーション』である。最良の作品を世に遺すためにも社内外の連携は欠かせない。協力会社を含めると、1000社以上が作品作りに携わるので、いかに重要であるかがわかる。部門から部門へ業務を引き継いでいく流れがあるなかで、ケアレスミスや伝え間違いは絶対に避ける必要があり、そのためにも先輩に教えを乞うことが多くある。その中でも、堀さんは普段から社内外の方たちとの繋がりを大切にしていることから、仕事のしやすさを感じているのだ。職場において上下関係にかかわらず連携体制ができていることと協力会社との強固な繫がりこそが「良い仕事が良い人を育て、良い人が良い仕事を生む」という竹中工務店の人材育成の考え方の実現に近づくことができると話してくれた。このような姿勢により、お客様の要望に応えるために、情報提供し、自分たちの考えを言いつつも、意見を尊重しあう、つまり、お互いがこだわりを言い合うことで、最良の作品づくりに繋がる。

 会社全体が一丸となって、コミュニケーションを大切にすることにより、個々の能力を最大限に発揮し、チームワークの向上に繋がり、最高の作品づくりができる。

経験が社員を成長させる

 堀さんは2年目に支店内の提案制度(業務改善を提案するもの)において、作品づくりに携わるみんなが作業所で安全に働けるための教育制度を提案し、支店内で一番良い賞を獲得された。

 その提案とは、協力会社様の作業の安全や技術においての教育が不十分であり、万が一の事故を防ぐために、その教育を充実し、無料で教育の機会を協力会社様に提供するという制度を作るものである。

 作業所での安全第一はもちろん、教育制度は職人方のノウハウ構築に少しでもプラスになり、最高の作品を作りたいという堀さんの相手を思う気持ちがこの提案を生んだにちがいない。

 また現在堀さんが働いている名古屋地区FMセンターの事務所の改修工事に携わるという経験をしている。設計部の方たちと一緒に以前の事務所の課題をみつけてその課題を解決するためにはどういう事務所がいいのかを考え、工事担当と話しながら改修に携わった。自分が過ごすスペースで発注者・施工者・使用者の3つの立場を経験したことは、堀さんがよく携わっているテナント入れ替えに伴う改修工事に生かせるものであったと語ってくれた。

 堀さんは竹中工務店が新しく建設した作品を実際に見た時に、竹中工務店で働いていることを誇りに思い、作業所を見かけるとついどの工事にどの関係会社が請け負っているかなどをチェックしたり、壁の素材を確認したりするそうだ。この話を聞き、大きな愛社精神を感じることができた。また、現在は改修工事の事務を主に行っているが、今後は一から新しく建物をつくることに携わりたいと話していた。将来の目標をもって働いている姿は仕事が常に自分を成長させているのだと取材を通して感じた。

創業400年の伝統

column 発見

 「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」これは竹中工務店の経営理念であり、創業当時から受け継がれてきた竹中のDNAだと言っても過言では無い。この「作品」は一人で作るのではなく、多数の人が協力して完成する。そのため竹中工務店ではコミュニケーション能力の養成に非常に力を入れている。この取り組みは朝に従業員が行うラジオ体操から新入社員教育まで多岐に渡る。

 新入社員教育では神戸にある教育寮で仲間と共同生活をしながら、社内の各部門で2、3部門を経験するジョブローテーションシステムが導入されている。このシステムの目的は社内の様々な部門の業務内容や部門間の仕事の繋がりを理解することである。寮では複数人の社員が相部屋になっており、職種が違う社員が寝食を共にするので、同期の社員間のヨコのつながりが強くなる。また新入社員一人一人に指導担当者がマンツーマンで教育を行うので、タテのつながりもできる。これにより社員は自分のキャリアビジョンを明確にし、社員間での協力体制を強化することができるのだ。

 このように社員の能力を継続的にサポートする環境があるからこそ、「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」ことができるのでは無いだろうか。

チーム紹介

梶 俊樹(経済学部 2年)
豊田 貴子(経済学部 2年)
磯田 一輝(経済学部 1年)
山本 真衣(国際コミュニケーション学部 1年)

※本記事は2017年9月現在の内容となります。