次に天竜区役所に務めるOBお二人にだが、天竜区は市内7つの行政区のひとつであり、旧5市町村で構成されている。同区は、浜松市の半分以上の面積を有するが、その多くを森林が占め、中山間地域ならではの課題もある。
本学OBの近藤さんと竹中さんは共に区振興課に所属していらっしゃる。同じ課ではあるが仕事は異なり、近藤さんは区役所内の業務委託契約事務や庁舎設備の調整、庁舎の維持管理などを担当され、竹中さんは人口減少や高齢化などの課題がある中、中山間地域振興を担当されているとのことだ。
近藤さんは、木造建造物を全国的に調査する農林水産省と関係企業が、天竜杉やヒノキを使った天竜区役所を訪れた際、その担当をされたお話をしてくださった。近藤さんは、国やその関係企業とのやりとりを任され、「任されたことで、『市役所の職員になれた』と感慨深く感じ、印象に残っています。」と仰っていた。近藤さんは、このような仕事に加えてさまざまな区役所の業務を通し、計画性を持つことが大切と学んだと教えてくださった。区役所の業務は各担当が決まっている。その仕事一つ一つにはいつまでにやり終えるべきか期限があり、計画的に仕事をしないと後々自分が手一杯になってしまい、満足のいく仕事ができないのである。そのため、近藤さんからは、「日頃から計画性を持って行動するように心がけると良いです。」というアドバイスを頂いた。このような意識を持って行動することは、今の私たち学生に対しても重要なことではないだろうか。
竹中さんは、移住者支援を担当したお話をしてくださった。区では都市部での移住相談会や公式HPの活用など、様々な形で移住促進活動を行っている。
退職後の方、子供を自然の中で育てたい家庭などが移住してくるという。関連して、区の魅力発信のため「ザ・山フェス」というNPO団体との協力イベントや「森のまち童話大賞」という子供たちに自然を身近に感じてもらう目的の童話コンテストの募集などもしているとのことだ。竹中さんが担当された移住者の方は、東京の方で、田舎暮らしには大きな不安があるだろうと感じられたそうだ。竹中さんは、市の「移住コーディネーター」と共に自治会と顔つなぎをしたり、空き家改修の補助金の手続きを手伝ったりと、移住に向けて親身に協力をされたそうである。移住が決まり、無事手続きが完了したとの連絡をもらった時は、竹中さんは大きな喜びを得られたそうだ。「はるばる東京から来てくださった方の支援ができた達成感は大きく、他では味わえない気持ちでした。」と仰っていた。
市職員の業務を通して
今回の取材では、浜松市人事委員会事務局の方にお話を伺うこともできた。本庁舎訪問の際に石原様、天竜区訪問の際に鈴木様からそれぞれお話を伺ったので、少し紹介させていただきたい。
石原さんは採用をご担当されているが「ミスマッチを減らすこと」を最も大切にしていらっしゃるそうだ。これは仕事が思っていたものと違うということを少なくしたいという意味である。石原さんは「入庁された方にはやりがいを感じてほしい」とおっしゃる。浜松市をはじめ、その他の市町村や企業でも、インターンシップなどその業務に触れる機会が設けられているケースは多い。就職希望者側もそうしたものに参加するなどして、勤務希望先の特徴や仕事の内容の理解に努めることが必要であるのだろう。
鈴木さんからは異動に関するお話を伺った。市役所職員は数年ごとに異動があるため、新しい業務を一から覚えなくてはならず、配属後には分からないことが多く出てくることもあるという。そうした時、少しでも早く業務を覚えられるように、自ら調べることも大切だが、周りに尋ね、協力して仕事に取り組む姿勢が大切だとのことだ。鈴木さんは、「新しい部署に配属されれば新しいことができる。多くのことを経験すると視野が広がり、次の職場でも自分の能力を活かせるのです」とおっしゃったが、周りと協力し合い、足りない点を補完しあいながら業務を進める環境があるからこそ、経験と能力を存分に生かせるのだろう。