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所在地浜松市中区元城町103-2
設立1911年(明治44年)
代表者市長 鈴木 康友
従業員数 8,897名
(2017年4月1日現在)

viewpoint 業界

 地域住民への行政サービス全般を行う地方市役所の仕事は多岐に渡る。窓口で書類発行をする印象が強いかもしれないが、それは一部にすぎない。地元産業の発展や防災・環境保全、道路や河川・上下水道整備など、業務範囲は広く、市役所内には様々な部署がある。

 市役所職員の働き方も多様だ。数年ごとに異動が行われるため、同じ部署に固定されて同じ仕事を続けるということはなく、様々な仕事経験を積むこととなる。また、市役所は、市民に近いところで働くことが多いため、直接その声を聴きながら仕事が出来る。このような働き方を通して、やりがいある仕事を様々に経験しつつ働く市職員の方々は、より住みやすい街づくりに重要な役割を果たしているのだ。

viewpoint 企業

 浜松市は市役所本庁舎を置く都市部の他、海、川、湖、山などの豊かな自然環境に恵まれた沿岸部や中山間地域も擁し、その多様性から、さながら日本を縮小したような地域である。

 この多様なフィールドの中、浜松市役所では「やらまいか精神」(遠州の方言で「やってみよう、やってやろうじゃないか」の意味)を掲げている。「国土縮図型」と呼ばれる多様性を抱える地域で、行き届いた行政サービスを実施するため、浜松市職員は、「何事もまずやってみて、自ら考えチャレンジする」との気持ちを胸に、常に新しい事業を進めようと動いているのだ。

活躍する職員

浜松市役所
牧野 尚子 氏

市民部創造都市・文化振興課
2015年度 地域政策学部 卒業

近藤 大照 氏
天竜区・区振興課
2014年度 地域政策学部 卒業

竹中 良輔 氏
天竜区・区振興課
2015年度 法学部 卒業

浜松市役所で働くOB・OGの姿

 今回は、浜松市役所本庁で働く牧野尚子さん、市内7つの行政区のひとつである天竜区役所に勤める近藤大照さん、竹中良輔さん(以下、それぞれ「牧野さん」、「近藤さん」、「竹中さん」)にお話を伺った。

 まずは採用2年目の本学OGである牧野さんだ。牧野さんは創造都市・文化振興課に勤務し、浜松市の文化を守り、発展させるためのイベントの企画運営をされている。一例として2017年8月に開催した講談会をあげてくださった。同イベントは前例がなく、企画から運営まで全て任されたため、苦心されたそうだが、250名の参加を想定したイベントに450名の申し込みがあるなど好評を博した。こうした成功の裏には、牧野さんの努力がある。牧野さんは、より良いイベントを企画するべく、講談師の方やその事務所とのやり取りの中で、相手を理解し、コミュニケーションが円滑となるように心がけられたそうだ。また、時には業務外でその講談師の方のイベントを見るなど、様々な努力をしつつ仕事を進められた。結果として前述のとおり成功裏にイベントを終えることができ、「感謝の声やまた実施してほしいとの声もいただきました。市民の方に楽しんでもらえて、やりがいを感じます。」と笑顔で仰っていた。
 次に天竜区役所に務めるOBお二人にだが、天竜区は市内7つの行政区のひとつであり、旧5市町村で構成されている。同区は、浜松市の半分以上の面積を有するが、その多くを森林が占め、中山間地域ならではの課題もある。

 本学OBの近藤さんと竹中さんは共に区振興課に所属していらっしゃる。同じ課ではあるが仕事は異なり、近藤さんは区役所内の業務委託契約事務や庁舎設備の調整、庁舎の維持管理などを担当され、竹中さんは人口減少や高齢化などの課題がある中、中山間地域振興を担当されているとのことだ。

 近藤さんは、木造建造物を全国的に調査する農林水産省と関係企業が、天竜杉やヒノキを使った天竜区役所を訪れた際、その担当をされたお話をしてくださった。近藤さんは、国やその関係企業とのやりとりを任され、「任されたことで、『市役所の職員になれた』と感慨深く感じ、印象に残っています。」と仰っていた。近藤さんは、このような仕事に加えてさまざまな区役所の業務を通し、計画性を持つことが大切と学んだと教えてくださった。区役所の業務は各担当が決まっている。その仕事一つ一つにはいつまでにやり終えるべきか期限があり、計画的に仕事をしないと後々自分が手一杯になってしまい、満足のいく仕事ができないのである。そのため、近藤さんからは、「日頃から計画性を持って行動するように心がけると良いです。」というアドバイスを頂いた。このような意識を持って行動することは、今の私たち学生に対しても重要なことではないだろうか。

 竹中さんは、移住者支援を担当したお話をしてくださった。区では都市部での移住相談会や公式HPの活用など、様々な形で移住促進活動を行っている。

 退職後の方、子供を自然の中で育てたい家庭などが移住してくるという。関連して、区の魅力発信のため「ザ・山フェス」というNPO団体との協力イベントや「森のまち童話大賞」という子供たちに自然を身近に感じてもらう目的の童話コンテストの募集などもしているとのことだ。竹中さんが担当された移住者の方は、東京の方で、田舎暮らしには大きな不安があるだろうと感じられたそうだ。竹中さんは、市の「移住コーディネーター」と共に自治会と顔つなぎをしたり、空き家改修の補助金の手続きを手伝ったりと、移住に向けて親身に協力をされたそうである。移住が決まり、無事手続きが完了したとの連絡をもらった時は、竹中さんは大きな喜びを得られたそうだ。「はるばる東京から来てくださった方の支援ができた達成感は大きく、他では味わえない気持ちでした。」と仰っていた。

市職員の業務を通して

 今回の取材では、浜松市人事委員会事務局の方にお話を伺うこともできた。本庁舎訪問の際に石原様、天竜区訪問の際に鈴木様からそれぞれお話を伺ったので、少し紹介させていただきたい。

 石原さんは採用をご担当されているが「ミスマッチを減らすこと」を最も大切にしていらっしゃるそうだ。これは仕事が思っていたものと違うということを少なくしたいという意味である。石原さんは「入庁された方にはやりがいを感じてほしい」とおっしゃる。浜松市をはじめ、その他の市町村や企業でも、インターンシップなどその業務に触れる機会が設けられているケースは多い。就職希望者側もそうしたものに参加するなどして、勤務希望先の特徴や仕事の内容の理解に努めることが必要であるのだろう。

 鈴木さんからは異動に関するお話を伺った。市役所職員は数年ごとに異動があるため、新しい業務を一から覚えなくてはならず、配属後には分からないことが多く出てくることもあるという。そうした時、少しでも早く業務を覚えられるように、自ら調べることも大切だが、周りに尋ね、協力して仕事に取り組む姿勢が大切だとのことだ。鈴木さんは、「新しい部署に配属されれば新しいことができる。多くのことを経験すると視野が広がり、次の職場でも自分の能力を活かせるのです」とおっしゃったが、周りと協力し合い、足りない点を補完しあいながら業務を進める環境があるからこそ、経験と能力を存分に生かせるのだろう。

column 発見

 浜松市は政令指定都市で最大の面積を誇る自治体である。統括範囲が広いゆえ、市内は七つの行政区に分かれており、部署も多い。そのため、浜松市では、本庁や行政区間での連携を円滑にするために、情報共有のためのグループウェアを活用している。このシステムにより、市職員全員が、本庁や各行政区間で共有すべき様々な資料や情報を職場の自分のパソコンでスムーズに共有することができる。こうした情報共有により、各行政区や部署が単独で動く非効率な縦割り行政とならず、より充実した行政サービスが可能となるのだ。紙面の関係で詳細は書けないが、今回お話を伺った創造都市・文化振興課の牧野さんも、他部署と連携したことで、より良い仕事ができた経験談をお話くださった。

 地域や住民に対する熱い思いを持つ職員が連携して働く浜松市。今後も地域住民の声に耳を傾け、市が一体となって業務を進めることで、さらに発展していくことだろう。

チーム紹介

河村 尚紀(地域政策学部 2年)
柴田 美由貴(地域政策学部 2年)
加藤 洸一(地域政策学部 2年)
加藤 瑛(地域政策学部 2年)
野口 すみれ(地域政策学部 1年)
北本 早絵(文学部 1年)
太田 朱音(文学部 1年)
縄稚 朋子(文学部 1年)

※本記事は2017年9月現在の内容となります。