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所在地東京都小平市小川町1-94
設立昭和30年2月
代表者代表取締役社長 河合 伴治
従業員数323名
(2017年7月時点)

viewpoint 業界

 私たちの生活に当たり前のように存在し、手頃な値段で手に入れることができるお菓子。一日三食の食事と異なり、私たちが食べたいときに口にして、お菓子は我々の欲求を満たしてくれる。

 お菓子の製造・流通・販売を行っている企業は数多く存在するが、近年の国内菓子市場は少子化の影響もあり、頭打ち傾向にある。また、お菓子の原材料は海外から輸入することが多いため、為替の円安変動も菓子業界にとって痛手となっている。

 こうした国内市場の状況から、海外進出で活路を見出す企業もここ数年で増加している。少子化の影響はお菓子にまで広がってきたというのは驚きを隠せない。

 今後、国内製菓メーカーの海外展開が加速するものとみられるが、海外でどのような成長戦略を描くのか、その動向に注目が集まるであろう。

viewpoint 企業

 有楽製菓株式会社(以下、「有楽製菓」)は、昭和30年2月に東京都世田谷区で創業された菓子メーカーだ。現在も本社は東京都にあるが、愛知県豊橋市に主力商品『ブラックサンダー』を生み出した豊橋夢工場を置き、大阪や札幌にも営業所を構えている。

 「夢のある安くて美味しいお菓子の創造」を理念に掲げ、挑戦と変革を続けて成長している同社は、主力商品である『ブラックサンダー』をはじめとして、常に価格以上の美味しさと満足感を追求した商品展開を行っている。コンビニエンスストアなどのお菓子売り場で我々が同社の製品をつい手に取ってしまうのは、社員の方々の「本当に美味しいとお客様に喜んでもらえるお菓子を作りたい」という想いと、その努力が背景にあるのだ。

有楽製菓の挑戦

有楽製菓株式会社
杉山 昌駿 氏

開発部商品開発課
2015年度 経営学部 卒業

『努力』をすることの意味

 有楽製菓には、営業・マーケティング部門や事務系管理部門など様々な仕事があるが、入社後は、まず商品製造ラインに配属される。これは、メーカーのなかで「製造」は全ての基本であり、各々が「製造」について突き詰めていく中で、その人の資質や性格が仕事ぶりから見えてくるからだと人事部の小笠原広大さん(以下、「小笠原さん」)が教えて下さった。製造ラインで働くことになるということは、食品に関する専門知識の有無が入社選考に大きく影響するのではないかと考えてしまうが、小笠原さんによれば、「食品に関する専門的な知識がなくても大丈夫です。それよりも自身の成長のために必要な努力をどれだけできるか(のめりこめるか)が重要です」とのことだ。

 ここで、有楽製菓で働く本学OBを紹介したい。入社二年目、製造課を経て現在は商品開発課で活躍する杉山昌駿さん(以下、「杉山さん」)だ。杉山さんは、「衣食住は永遠のニーズであり、無くなることはない。誰かのためにモノを残す仕事がしたい。」という気持ちを軸に就職活動を行われ、有楽製菓に入社された。入社前にお菓子に関する知識はほとんど無かったとのことだが、「目新しいものに興味がある」性格から、私生活でもコンビニエンスストアやスーパーマーケットのお菓子売り場で新商品や珍しい商品に目を向け、研究されたそうだ。開発課で新商品設計や既存商品の改良・発展に携わる中で、身の回りにアンテナを張って努力ができることは大きな強みとなるだろう。また、杉山さんは、大学時代の「ゼミナール活動」での経験も、大きな財産として仕事に生きているとおっしゃっていた。定刻までゼミナール活動をした後も、主体的に夜遅くまで活動することが多かったため、「ゼミナール活動のおかげで挫けなくなった」と笑顔でお話になられた。その他、フットサルサークルや、産官学連携キャリアプログラムLearning+への参加など、充実した大学生活を送られた杉山さん。今後も、自らの「興味に向かって突き進む力」を生かして努力を重ね、活躍を続けていかれるだろう。

心が満たされ、わくわくするお菓子を目指す

 有楽製菓の商品に対するこだわりの一つは「安くて美味しいお菓子」だ。杉山さんも、「30円のお菓子だけれど、100円を支払ってもいいと思えるような、価格以上の美味しさを求めなければなりません。そこで妥協はできません。」とお話しになる。杉山さんは「新しい物を生み出さなければならない」と、毎日試作を重ねる中、原料・資材メーカーと連絡を取って理想の商品像に近付けながら、会社に送られてくるお客様の意見を反映させて開発を行う。ここには、お客様のことを考えた開発への想いが感じられる。

 商品に対する「低価格・高品質」のこだわりは、事業への予算配分にも現れている。同社では、より良い商品の開発・製造に多くの予算を割いている。高品質な製品だからこそ、メインターゲットである若者に向けて、SNSを通じて宣伝を行った際に、口コミで情報を拡散してもらえる。テレビCMを行う大手ライバル企業と比べて不利とも思えるが、「美味しいので絶対伝わる」と杉山さんは商品への自信を語られた。長年勤務している社員も、過去に商品の売り上げが大きく伸びた時には、「やっと商品の美味しさをわかってもらえた」と感じられたそうだ。お二人のお話からは、商品の美味しさへの自信と誇りが伝わってきた。

 また、お菓子の美味しさはもちろんのこと、パッケージにも注目したい。同社はより多くのお客様に商品を手にとってもらうため、店頭で目立ち、見やすいものにすることを心掛けているそうだ。キャッチ―なフレーズが印字された同社商品が記憶に残っているという方も多いのではないだろうか。『ブラックサンダー』のパッケージは1994年の発売当初から変更されており、4代目となる2017年9月リニューアルの最新版では商品が裏返っても「ブラックサンダー」の文字が見えるようデザインされた。こうした工夫も商品の広まりに一役買っているのだろう。

 低価格・高品質である上に、独特の面白さが表現されたパッケージ。私たちは今後、ますます同社の商品に魅了されていくのではないだろうか。

成長するための充実した時間と場の提供

 就職活動期間の短期化が進み、応募期間なども早まっている昨今、企業を深く知らずに応募し、内定後に辞退するケースが増えているといった話を聞くことがある。そうした不幸をできる限り避けるため、有楽製菓では会社説明会で行うグループワークについて、人事担当者が参加者にフィードバックを行うといった取り組みをしたり、入社後の不安を少なくするための内定者同士の交流会を行ったりして、就職活動学生にとってプラスになることをするように心掛けておられるとのことだ。人事部の小笠原さんは、「当社に入社する・しないに関わらず、説明会に来たことが自分にとってプラスとなったと学生が思えるようにしたい」とおっしゃっていた。小笠原さんご自身も、「他社ではやっていないことを有楽製菓は行っており、自分のやりたいことができる」との思いから就職を決められたそうだ。有楽製菓のように学生のために様々な採用に関する取組みを行ってくださる企業もあるが、学生側としても、より充実した学生生活を送る中で自分が興味・関心を見つけ、就職活動が始まったときにすぐに動けるようにすることが大事なのではないだろうか。

 杉山さんは、「大学時代にいい意味で思いっきり遊ぶことが大切」だとおっしゃっていた。もちろん、大学の講義をしっかり受けることは大切だ。他方で、時間があるときにインターンシップや海外に行くなど、興味のあることに力を入れることも、自分の幅を広げることに繋がったり、将来のビジョンに影響したりすることもあるのだ。これは、実際に学生採用をしていらっしゃる小笠原さんもおっしゃっており、「自分なりの目的や理由を持って何かに取り組んだ学生は、採用担当者から見ても魅力的にうつる」とのことだ。学生時代に知識を積み上げていくことももちろん大事だが、アルバイトやインターンシップなどの課外活動を通してたくさんの人と触れ合い、フィーリングを育てることも大切であると考えさせられた。

 学校生活で学ぶことも大切だが、学校から一歩外へ出たときに主体性を持って行動できる力を身に付けたい。それが成功へと繋がるのだ。

「全国に夢の味を」

column 発見

 今では馴染み深いものとなっている『ブラックサンダー』だが、広く知られるようになったのはおよそ10年前。大学生協で販売されるようになり、人気が爆発してからだ。お客様のことを第一に考え、「低価格・高品質」をキーワードに商品創りに妥協しなかった結果、「安さ・美味しさ・ボリューム」を求める大学生の間でヒットしたのだろう。

 現在、海外でも『ブラックサンダー』や『ビッグサンダー』などが販売されるまでに会社は成長したが、お客様第一の姿勢は変わっていない。例えば、海外展開する中で、宗教上口にできないものがある国では、材料を変えて多くの方に商品を楽しんでもらう工夫をしている。最近国内でアレルギーを気にかける方が増えたため、そうした方にも気にせず食べてもらえるように、2017年9月リニューアルの『ブラックサンダー』には卵を使用していない。目を見張るべきは、こうした配慮の中でも味や食感、食べごたえはそのままに、更なる美味しさを生み出していることだ。

 有楽製菓は、“美味しい”のための余念なき追求心の賜物として、今後も「夢の味」を世界に届けていくのだろう。

チーム紹介

犬塚 育歩(地域政策学部 2年)
狩野 結美(文学部 1年)
山田 直美(文学部 1年)
朝倉 来美(経営学部 1年)

※本記事は2017年9月現在の内容となります。