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愛知大学低年次キャリアデザインプログラム「OB・OG探訪記」
名鉄観光サービス株式会社
旅行と貨物で世界をつなぐ
所在地愛知県名古屋市中村区名駅南2丁目14番19号(住友生命名古屋ビル)
設立昭和36年4月1日
代表者代表取締役社長 大西 哲郎
従業員数1,552名(男性1,044名 女性508名)(2018年12月現在) 

viewpoint 業界

 大切な人との旅行を楽しいものにするには、前もって準備をすることが必要である。そこで、日程や予算を考慮して交通手段や宿泊施設の手配をサポートするのが旅行会社である。近年、インターネットのみで取引を行うOTA(Online Travel Agent)の形態をとる企業が増えている。24時間、膨大な数のプランや宿泊施設を検索することができ、この利便性から多くの支持を集めている。しかし、主なデメリットとして、キャンセルの取り扱いがわかりづらいといった点が挙げられる。特に台風や雪といった(天候による)トラブルが起きた場合、迅速に対応できない可能性がある。それに対して従来の店舗型では、プランの変更やキャンセルについて直接話をすることができたり、疑問点を気軽に聞いたりすることができる。このように一見、旅行とインターネットの普及は関係ないように思えるが、目まぐるしく変わる人々の生活の中で顧客のニーズをくみ取ることにおいて重要になってくる。
また2020年には東京オリンピックが開催される。世界各地の人々を呼び込み、競技を盛り上げるために旅行業界全体の活躍が期待される。

viewpoint 企業

 ~私たちは「人と人との出会い」とそこから生まれる「コミュニケーション」を大切にし、心豊かな社会の発展に貢献します~
これは名鉄観光サービス株式会社(以下、名鉄観光)の経営理念である。名鉄観光は、名古屋鉄道グループの会社として1961年に設立された。そして、お客様の心に一生残る思い出を作る旅行部門と、私たちの生活を支える企業の物流を円滑にする国際貨物の2つの部門で人々の暮らしをより豊かにすることを目指している。
特に旅行部門では、お客様の要望や関心に合わせて最適な旅行プランを提供するために、お客様が直接相談することができるカウンターや、いつでもプランを探して申し込むことができるインターネットでのサービスも力を入れている。また、修学旅行や企業の団体旅行の手配、イベント・コンベンションの企画や提案、さらに年々増加する訪日外国人を中部地方に誘致するインバウンド事業など幅広い分野で展開している。

“創造力とホスピタリティマインドの集結” “素早く効率的に「チームワーク」で正確な仕事を”

名鉄観光サービス株式会社
加藤 あや香 氏

総務部 主任

フライトだけじゃないセントレア

 名鉄観光から見たセントレアの魅力の一つとして、立地の良さがある。セントレアができる2005年までは県営名古屋空港が主に使われていた。だが町中に立地しているため、騒音の問題や空港を拡張するのが困難であり、フライトの時間帯や本数に制限があった。そのため旅行会社としても商品の幅がせまかった。しかしセントレアは海上に位置しているため、これらの障壁がなくなった。よって、今までよりも幅広い商品を展開できるようになった。
またセントレアも一つの観光スポットとなっている。多くの飲食店や飛行機を眺めながら入浴できる風(フー)の湯、2018年にオープンしたボーイング787初号機が展示されているフライトオブドリームズなど、空港としてだけでなくテーマパークとしての側面も持っている。実際に飛行機に乗るためではなくレジャー施設として訪れるお客様も多く見かける。
さらにセントレア内だけでなく、周辺地域も魅力の一つである。セントレアの隣に位置する常滑市には、焼き物やレトロな街並みが楽しめるやきもの散歩道など観光スポットも数多くある。空港ではどうしてもフライトまでの待ち時間ができてしまう。そうした時間も楽しめるセントレアは名鉄観光にも、空港を利用されるお客様にも魅力的といえるだろう。

烏尼尓 氏
インバウンド部

世界の中部を目指して

 日本を訪れる外国人旅行者、つまりインバウンドへの需要がここ数年高まっている。ラグビーワールドカップや2020年にある東京オリンピックなどの国際的なイベントの開催や格安での運航を可能にしたLCCの参入、政府のインバウンド呼び込み施策など数多くの要因によって現在、インバウンド需要は盛り上がりを見せている。もちろんその影響は旅行業界にも広がっている。その需要に応えるため名鉄観光にはインバウンド部がある。私達はインバウンド部のウニルさんに取材を行った。インバウンド部では、主に団体向けの訪日旅行の手配と個人向けの営業活動をおこなっている。団体に対しては、各国の旅行会社と連絡を取り社員旅行や修学旅行の要望に応えながら旅行の企画をする。一方個人に対しては、名鉄グループの観光施設を組み合わせた旅行プランの紹介をしている。これらの業務が、日本を訪れる海外のお客様の旅行を支えているのだ。

また、中部地方の魅力を感じてもらうため、名鉄グループでは昇龍道プロジェクトと呼ばれるものを推奨している。昇龍道プロジェクトとは中部地方の美しい自然や歴史を感じられる名所などを巡る観光ルート、昇龍道を推奨する取り組みのことである。この中には愛知県の名古屋城、三重県の伊勢神宮、石川県の兼六園などの数多くの名所がある。また景観や名所だけでなく、伝統工芸の体験や豊かな自然を利用したアクティビティ、そして海や山の幸を味わえる食事など、魅力あふれる中部地方を思う存分堪能することができる。名鉄観光としては、バスのフリーチケットを外国人観光客向けに販売している。これは利益を見込んだものではなく、あくまで“中部地方をもっと多くのお客様に知ってもらいたい“という考えのもと行われている。この昇龍道はセントレアをはじめとする中部地方の空港や駅からルートが始まる。あらかじめモデルコースはあるが、お客様自身が訪れたい場所を選択し、自らの手でコースを作っていくこともできる。これも昇龍道プロジェクトの魅力の一つとなっている。

旅行会社が貨物?!

 多くの人が“旅行会社”と聞いてイメージするのは、お客様と直接関わることのあるカウンター業務なのではないだろうか。前述のとおり名鉄観光にはカウンター業務があり、そこでは旅行プランの提案、航空券や宿泊施設の手配など、旅行全般に関わるサービスを提供している。旅行部門は旅行をするお客様をセントレアへ送り出す役割を担っているため、セントレア内で直接的にビジネスを展開しているというわけではない。
しかし、名鉄観光は旅行会社でありながら、「国際貨物事業」を行っており、この「国際貨物部門」がセントレアというエリア内でビジネスを展開しているのである。
名鉄観光は国際航空運送協会の公認代理店として、輸出入に関するトータル業務を請け負っている。単に貨物を輸送するだけでなく、より付加価値の高いサービスを提供し、セントレアなどの空港から全世界にわたるきめ細かい航空物流システムを展開している。
名鉄観光が「旅行部門」と「国際貨物部門」の2つの事業に取り組んでいるために生まれるメリットがある。例えば、台湾でお祭りがある場合、神輿とそれを担ぐ人を輸送させなければならない。そこで、国際貨物部門が神輿を、旅行部門が人をそれぞれ担当することができる。そして、これら2つの部門が連携をとることで、別々の企業に任せた際に生じる手間やコストを削減することができる。これはまさに、他の旅行会社にはない強みと言えるだろう。

アットホームな職場が良いサービスを生む

column 発見

 取材をさせていただいた総務部の加藤さんが「社内の雰囲気がアットホームで社員同士の仲が良く、もっと競い合ってもいいくらいだ。」と話してくださったことは、とても印象的だった。お互いに信頼しあっているからこそ、思っていることを素直に言うことができる、とても風通しの良い職場であると感じた。
また、カウンター業務ではスムーズな対応が求められる。そのためには社員の連携が重要である。名鉄観光は社員同士で情報を共有し、どの社員が対応しても同じ対応がとれるほど、密接に連携がとられている。だからこそ、社員が信頼しあいお互いのことを分かり合えるのが、この会社の何よりも強みなのだといえよう。
社員同士のつながりがより快適な職場を形成し、その環境がより良い旅行サービスを生み出すのである。 

チーム紹介

大熊 彩耶(国際コミュニケーション学部 2年)
山盛 赳彦(経済学部 2年)
永井 祥子(法学部 2年)
高木 大成(経営学部 1年)

※本記事は2019年12月現在の内容となります。