名古屋エアケータリング株式会社
竹之内 均 氏
取締役
セントレア唯一の機内食を作る企業
名古屋エアケータリングは、ANA、JAL、大韓航空、フィンランド航空をはじめとする全23社の顧客をもっており、これらの航空会社から機内食調製の依頼を受けている。つまり、セントレア発の便ほぼすべての機内食の調製をしている。
このような体制をとることができるのはなぜだろうか。それは日本の大都市圏別の人口の割合が関係している。2017年度の大都市圏別の人口割合の統計を見ると、首都圏は19%、関西圏は9%、東海圏は6%である。東海圏の人口は首都圏や関西圏と比較すると少ないと言える。また、全国の主要な空港の利用者数のランキングを見ると、人口の多くを占めている首都圏や関西圏にある羽田空港、成田国際空港や関西国際空港が上位3位を占めている。一方で東海圏にあるセントレアの利用者数は全国第8位である。つまり、セントレアを利用する人が少ないと言える。
そのため発注される機内食数が他空港に比べて少なく、名古屋エアケータリング単独で各航空会社の機内食の注文に対応することができる。これはまさにセントレアで唯一の機内食を作る会社である。そして、他の空港ではありえない特殊な点であり、強みでもある。
伊東 里紗 氏
顧客サービス部 メニュー企画・商品開発グループ
(現在:品質保証部)
機内食はどのようにつくられる??
先程も述べたように、名古屋エアケータリングは航空会社からの依頼を受けて機内食を作る。そこで、メニュー企画の伊東様に、名古屋エアケータリング単独で航空会社からの多種多様なニーズに対応するため、メニュー考案にはどのような工夫がなされている点のお話を伺った。工夫している点は大きく分けて3つある。1つ目は、機内は気圧が低く味覚が鈍るので機内食を濃い味付けにしている点である。2つ目は、行先や客層に応じて対応している点である。例えば、リゾート系エアラインだと女子旅や家族連れの旅行者が多いので見た目をカラフルにしたり、今っぽいメニューにしたりしている。中国系エアラインはビジネスマンが多いためカルビ丼などガッツリ系のメニューにしている。3つ目は、お客様の宗教にも配慮している点である。メニュー考案から実際に提供されるまで約1ヶ月、長い時は1年かかるそうだ。そんなメニュー考案の流れを経て、機内食が作られる。
私たちは取材後、工場内を見学させてもらうことができた。エアシャワーや50秒間手洗いなど徹底された衛生管理が行われていた。また、肉や野菜など食材ごとで保存場所が異なっており、品質管理にも力を入れていることに気付いた。そして、私たちが最も驚いたことは、1日約5,000〜6,000食作られる機内食が全て手作業で調製されていることだった。機械化が進む現代で手作業にこだわるのはなぜなのか。その答えを教えてくださったのは生産管理グループの谷川様である。谷川様によると名古屋エアケータリングは少量多品種の生産体制をとっているからだそうだ。
名古屋エアケータリングは国内初!?
名古屋エアケータリングは、国内初の空港(セントレア)隣接地にケータリング施設を建設した。実際に名古屋エアケータリングの食堂からは、滑走路や数多くの飛行機を見ることができた。滑走路が目の前にあるという近い距離にあることのメリットは、工場で出来上がった機内食をすぐに飛行機まで届けることができることである。これによって、公道を走るのと違い交通渋滞や事故等に巻き込まれることがない、出来上がってすぐ機内食を機内に届けることができるため鮮度が落ちにくい、航空会社の事情や台風等の災害やトラブルに迅速に対応することができるなど、セントレアの隣に位置しているからこそできることばかりだ。つまり、工場がセントレアに隣接していることは、セントレアと名古屋エアケータリング双方のメリットであると言える。
この会社で働く魅力
私達は取締役の竹之内様から福利厚生や社風について伺った。
名古屋エアケータリングは、セントレアの空港隣接地に建設された唯一の施設であるため、転勤する心配がない。愛知県外に住んでいる従業員はセントレアの近くに寮が設置されており、遠方に居住している者への配慮もされている。また、計画年休制度が設けられていることから自分で休みを決められるため、自由なライフスタイルを作ることが可能だ。さらに、女性には育児休暇など仕事と家庭の両立がしやすいような環境が整っている。このような点から福利厚生が充実しているといえる。
社風も良好と考えられる。なぜならば名古屋エアケータリングは、平均年齢34歳(令和元年八月時点)の若い世代が現場で多数活躍しており、目上の方にも積極的に自身の意見を発言することができるからである。実際、私たちが取材させていただいた際も取締役の竹之内様と社員の方々が和気あいあいとコミュニケーションを取っていることに驚かされた。この光景は普段から上司と部下の業務の連携が円滑に進んでいることを意味すると言える。
私達は、航空業界というとキャビンアテンダントやグラウンドスタッフ等のサービス提供の方々を想像しがちである。このように企業から消費者へのやりとりB to C(Business to Customer)の風潮を考える。しかし、名古屋エアケータリングの場合は、各航空会社からの注文により、機内食の調製から搭降載までを行っている。つまり、企業から企業へのやりとりであるB to B(Business to Business)といえる。
これは私達の航空業界に対する固定観念を覆すものだといえる。
名古屋エアケータリング(B to B)は、直接消費者と接する機会はないが、コツコツ地道に取り組む業務が多い。そのためセントレアを支える縁の下の力持ちのような人材が入社することに期待している。