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愛知大学低年次キャリアデザインプログラム「OB・OG探訪記」
郵船ロジスティクス株式会社
貨物で日本と世界をつなぐ
所在地東京都港区芝公園2丁目11番1号 住友不動産芝公園タワー
設立1955年2月28日
代表者代表取締役社長 水島 健二
従業員数24,457名(2019年3月31日現在)

viewpoint 業界

 フォワーダーとは、自らは船舶・航空機といった輸送手段を持たずに、輸送手段を持つ運送事業者(キャリア)を使って貨物輸送を行う事業者である。お客様である企業のニーズに対して輸送プランを作成し、国際貨物輸送を提供している。単なる輸送提供にとどまらず、国際輸送に付随する梱包、通関、在庫保管、発着地での輸配送なども行う。
 日本の企業にとっては、フォワーダーの存在は欠かせない。島国である日本は陸路に比べ、海路や空路による貿易が主だ。その場合、輸出入の通関など手続きが複雑で、ノウハウも多岐にわたっている。それらの難しい手続きや国ごとに異なる運送方法や関税、法規制などを全て自社で対応していくのには大きなコストがかかる。そこで、それらを代行、現地の企業との仲介をしてくれるのが、国際物流のプロフェッショナルであるフォワーダーなのだ。
 今後、グローバル化が進み、国際物流ビジネスにおいて日本製品の需要は拡大していくと考えられる。フォワーダー業界はこれからさらに注目されていくだろう。

viewpoint 企業

 郵船ロジスティクス株式会社(以下郵船ロジスティクス)は、前身の郵船航空サービス株式会社とNYK ロジスティックスジャパン株式会社が合併し、2010年10月にスタートした。その後、2018年2月に日本郵船株式会社の完全子会社となった。
 郵船ロジスティクスはお客様から貨物輸送の依頼を受けて輸送プランを作成し、国際貨物輸送を提供している。輸送方法としては、主に船舶を使う海上輸送、航空機を使う航空輸送、鉄道・トラックを使う陸上輸送がある。それらをお客様のニーズに沿うようにリードタイムやコストを考慮し、最適な輸送ルートを選定するとともに、通関や在庫管理、発着地での輸配送など幅広いサービスメニューを提供している。
 郵船ロジスティクスが輸送サービスを提供する際に心がけていることは、お客様に対してタイムリーな情報共有を行うことである。なぜなら、お客様にとって依頼した貨物が今どのような状況にあるのか(輸送中なのか、到着したのかなど)はとても大事な情報だからだ。このように、ニーズに合った輸送プランを提供するのはもちろんのこと、実際にその輸送がどのような状況にあるのかをお客様に伝えるということも大切なのである。
 これからも郵船ロジスティクスはより迅速なサービス提供を目指し、セントレアを通して日本の企業と世界を繋いでいくだろう。

信頼を築き上げる郵船ロジスティクス

郵船ロジスティクス株式会社
大浦 泰右 氏

航空貨物部
第二航空業務センター 中日本航空業務課

郵船ロジリンク株式会社
古橋 豊大 氏

中日本通関営業所 輸出課
 私たちは今回の取材を通して、郵船ロジスティクスの強みは人であるというのが輸送方法にも表れていることに気がついた。
郵船ロジスティクスは船舶を使う海上輸送、航空機を使う航空輸送、トラックや鉄道を使う陸上輸送など最適な輸送方法を提案し、貨物を運んでいる。例えば、時間がかかってもコストを抑えたいというお客様には海上輸送を、目的地まで短時間で届けたいというお客様には航空輸送を提案するなど、納期・費用・安全性、なによりもお客様のご要望に沿った輸送手段を組み合わせてサービスを提供している。
デモ発生などで空港が使用できなくなるといった国際情勢や台風などの悪天候による気象状況の影響にも対応している。悪天候で航空輸送ができない時には他空港や代替路線を利用する、フライト日を変更するといった、お客様にとって最適なサービス提案を行っている。
大浦様に「お客様の信頼と航空会社の信頼では、どちらが重要であるか?」とお聞きしたところ「お客様の信頼も大切ですし、航空会社の信頼も大切です。しっかり関係構築していくことでメニューを揃えてより良いサービスを提供でき、当社を選んでいただくことにつながります。」と仰っていた。
このようにして郵船ロジスティクスは両者と良好な関係を築いてきた。
さらに郵船ロジスティクスは世界中に578もの拠点があり、現地とのやり取りを行う際に最もタイムリーな情報共有を心掛けている。
これまで信頼関係を築き上げてきたからこそ、今の郵船ロジスティクスがあるのだ。
秋田 京子 氏
中日本営業本部 総務経理課

永田 絵美 氏
中日本営業本部 総務経理課

セントレア、多くのメリットを持つ空港

 私たちが取材した中部ロジスティクスセンターは、保税倉庫と事務所が一体となっている、2005年にセントレアの総合保税地域内に誕生した拠点だ。ここには、2つのメリットがある。1つは税関への手続きが簡略化できる総合保税地域という場所にあることだ。もう1つは航空会社へ貨物を搬入するまでの輸送時間の短縮だ。大浦様は、「ここ(中部ロジスティクスセンター)は空港のすぐそばにあるため、空港への貨物の輸送時間が10分から15分で可能です。」と仰っていた。つまり現在の拠点にはメリットが多いと言える。そこで、それ以前はどうであったのかをお聞きした。
 永田様は、「セントレアができる前は、豊山町にある県営名古屋空港と名古屋市中区にあった自社上屋間の輸送をトラックでしていました。」と仰っていた。例えば航空輸出の場合、名古屋市内にある自社上屋(倉庫)で税関に輸出通関申告をし、許可後貨物をトラックで空港に運び、航空会社に引き渡していた。そのため、交通渋滞に巻き込まれるリスクを考えねばならなかった。
また輸入では、航空機で到着した外国貨物を名古屋市内の自社上屋で輸入通関する場合、税関に保税運送(輸入許可前に外国貨物のまま日本国内を輸送すること)手続きの申請をする必要があった。セントレアの総合保税地域内に自社上屋を移したことで、よりスムーズな輸送サービスの提供が可能となったのだ。
 中部ロジスティクスセンターの利点は他にもある。それは事務所と倉庫が一体となっていることにより、貨物の確認を書類上で行うだけではなく、形や状態が分かりづらい貨物(例えば割れ物や、縦長・横長のものなど)があった場合でも倉庫で確認をすることが容易なことである。
 さらに中部ロジスティクスセンター内には、航空会社のパレットに貨物を組み付けるための装置も設置されており、自社取扱の貨物のみでULD(Unit Load Device)組みも可能である。一つ一つの貨物の特性を見極めながら、責任を持って組付けできることは貨物ダメージを防ぐという観点からもアドバンテージがあるといえる。
 常にお客様に寄り添ったサービスの提供を心掛けているのだ。これからも郵船ロジスティクスは、多くのメリットを持つセントレアと共にさらに、成長していくだろう。

仕事への姿勢が築く“信頼関係”

 郵船ロジスティクスが業務を行う上で大切にしているのは、お客様である企業や、官公庁との信頼関係だ。通関課で通関業務をされている古橋様は、「税関やお客様から信頼され続けるよう、適切な法令の下、適切な業務を遂行するように心がけています。」と仰っていた。貨物の個数や内容を誤って申告してしまうと密輸と疑われる可能性もあり、正しく業務を行うことが信頼関係を保つことに繋がっているそうだ。
 また、大浦様は混載部署で仕事をされている。そこでは、お客様の貨物の輸送方法や使用する航空会社のプランを組み、貨物を載せるスペースを調達したり料金を決めたりするのが主な役割だ。ある時、輸出通関の手続きが終わり、航空会社に貨物を引き渡した後に、お客様から「別の航空会社に変更してほしい」との依頼を受けた。大浦様は航空会社に断りを入れ、変更の手続きをしたが、この場合、予約していた航空会社のスペースが空いてしまう。「私個人としては、普段から航空会社と話すことが多いので、せっかく取ってくれたスペースをキャンセルしてしまうのは申し訳ないという気持ちもあります。しかし、お客様のご要望に柔軟に対応していくことも重要です。難しい判断や対応を迫られるときもありますが、妥協点を見つけて上手くプランを組んでいくのが大事です。日頃から関係各所と信頼関係を構築していくことが必要なのです。」と大浦様は仰っていた。
 企業間の仲立ちをする仕事ならではの難しさはあるが、相手のことを考えて誠心誠意取り組むからこそ、郵船ロジスティクスは企業や税関、航空会社と良好な関係を築き、信頼を得ているのだ。

これが、郵船ロジスティクスの本当の強さ

column 発見

 大浦様は、「この会社の強みは、人の良さだと思う。」と仰っていた。
 その人の良さが表れているところの一例として、何でも話せる先輩、後輩がいること、わからないことをすぐに聞ける環境があるとお聞きした。郵船ロジスティクスは、ビジネスを行う上で企業間の信頼関係、お客様の多様化するニーズに対しても、会社全体で対応する姿勢がこの人の良さから出てくるのだ。さらに大浦様は、郵船ロジスティクスへの入社を決めるとき、「他の企業と比べて、スペックやスキルよりも、自分のことを見てくれるこの会社に入りたいと思った。」と仰っていた。
 このプログラムの成果発表会を見に来てくれた秋田様と永田様は笑顔で手を振ってくれた。緊張していた私たちも、リラックスできた。
これらのことから、他の企業、税関や航空会社と良好な関係を保っているのだろうと感じることができた。
 セントレアを通して日本と世界を繋ぐ郵船ロジスティクスに期待したい。

チーム紹介

加納 颯人(経営学部 1年)
石橋 尚季(経営学部 2年)
杉山 文菜(経済学部 2年)
竹内 伶奈(国際コミュニケーション学部 2年)

※本記事は2019年12月現在の内容となります。