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愛知大学低年次キャリアデザインプログラム「OB・OG探訪記」
ANA中部空港株式会社
高品質な空港オペレーションの裏側
所在地愛知県常滑市セントレア一丁目1番地
創業1991年(平成3年)4月15日(設立)
代表者菊池 裕司
従業員数905名(2020年1月現在)

viewpoint 業界

 華やかなイメージの航空業界。多くの人が一度は憧れを抱いたことがあるだろう。
航空業界の職種といえば主に、客室乗務員、パイロット、整備士、グランドスタッフなど、フロントラインで活躍する人々を真っ先にイメージするかもしれない。しかし実際には、普段お客様とは接点の少ない様々な分野で多くの力が空の安全を支えている。

近年訪日外国人観光客の増加にともない、航空需要も年々増加していることを受け、航空会社の新規参入が激化している。FSC(フルサービスキャリア)やLCC(ローコストキャリア)など様々なキャリアが存在することで、利用者が旅のスタイルに合わせて航空会社を選択することができる。今後ますます高まることが予想される航空需要に対して、ハード面では新規滑走路の整備や飛行経路の見直し、またソフト面ではサービスにおけるオペレーションの自動化促進など、より多くのお客様が快適に航空機を利用いただけるよう多方面での改善が求められている。

viewpoint 企業

 ANA中部空港株式会社は2010年10月に設立され、ANAをはじめとする国内外エアラインの空港業務を受託し、「安全」を最優先としてお客様に快適にご利用いただける空港オペレーションを提供している。
業務内容は“ハンドリング”と呼ばれる空港地上支援、すなわち航空機の運航を支えるための空港内での手続き・作業全般である。
ハンドリングを担う部署として、貨物サービス部・オペレーションサービス部・旅客サービス部・グランドサービス部があり、ANAグループ行動指針ANA’s Wayの「あんしん、あったか、あかるく元気!」をモットーに高品質なハンドリングを行っている。

お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループを目指す

進化し続けるANA中部空港

 “空港で働く人”と言うと、語学が堪能、高身長で容姿端麗、女性が多い職場である、などと想像する方は多いだろう。では実際にどのような人材を必要としているのだろうか。
ANA中部空港が求める人材は、上記で挙げた多くの人が連想する“空港で働く人”ではなく、「努力と挑戦の精神を持つ方」そして、「ANA中部空港で働く上で明確な目標がある方」である。つまり容姿や語学力といった表面的な能力だけではなく、自らの能力をANA中部空港で活かしたいという強い思いやチャレンジ精神がある方を求めている。
今回取材をさせていただいた総務部の丹沢様・北河様によると、ANA中部空港は「お客様視点」を第一に考える企業であり、常にお客様の立場にたち、自ら考え行動する人材が多く活躍しているという。
お客様視点での取り組みの1つに、「イノベーション」が挙げられる。新しいアイデアを基に、これまで使用していたモノや仕組みとは異なるものを取り入れることで、航空機を利用されるお客様へのさらなる利便性の向上を目指している。実際に自動チェックイン機や、サイネージと呼ばれる飛行機の運航案内のディスプレイを導入するなど様々な工夫を行ってきた。

近年、日本文化の流行や東京オリンピック·パラリンピックなどの影響もあり、訪日外国人観光客は年々増加し、そのためANA中部空港の利用客も引き続き増加すると見込まれている。日本政府は2030年までに訪日観光客を6000万人に増やすという目標を掲げており、オリンピック・パラリンピックを終了後もますます航空需要は高くなると予想されている。今後のANA中部空港のさらなる発展に期待が高まる。

「お客様視点」がアットホームな社風につながる

 今回の取材を通じて、ANA中部空港はとてもアットホームな社風であると感じた。そう感じた理由は2つの取り組みにあった。
1つ目の取り組みは「アサーション」だ。もともとはANAの整備士がヒューマンエラーを防ぐために、気づきや疑問を先輩・後輩に関わらず積極的に声に出すという取り組みから始まった。この取り組みは現在ではANAグループ全体に浸透し、未然にエラーチェーンを防ぐための1つの手段として活用されている。
2つ目の取り組みは「イキイキし対話」だ。普段の業務における課題点を話しあったり、時には世間話もしたりするのだが、社員同士の話し合いの時間をあえて設けることで業務中のオペレーションの効率化、また団結力を高めることを目的としている。
この2つの取り組みからANA中部空港は、部門や先輩・後輩という垣根を超えたコミュニケーションが多いことが分かる。航空機一便を運航するためには、全ての部門が連携して業務を行う必要がある。そのため、ANA中部空港の風通しがよい社風は強みの1つである。「お客様視点」から始まったコミュニケーションを通じて、社内の雰囲気もよりよくするという一石二鳥の取り組みである。

ライバルの存在がサービスの質を高める

 “日本の航空会社”と言われ、思い浮かぶ会社はどこだろうか。きっと多くの人が全日本空輸(ANA)もしくは日本航空(JAL)と答えるに違いない。では、2社の違いをそれぞれ理解している人はいるだろうか。
ANAとJALの違いの1つに、会社の成り立ちがある。JALは国の出資により設立された国営の航空会社であり、ANAは民間企業からの出資により設立された純民間の航空会社である。設立当初から、資金面・路線数ともにJALが優勢である中、ANAはJALに対し、「追いつけ追い越せ」の精神のもと、努力と挑戦を重ねてきた。この“努力と挑戦”の精神が実を結び、現在ANAグループは国内線·国際線において売上高や路線数などあらゆる面でJALに追いつき追い越すほどに成長した。
設立から50年近く経過した現在でも、この“努力と挑戦”のマインドは後輩に受け継がれており、ANAグループの経営ビジョンでもある「世界のリーディングエアライン」を目指すべく、世界で一番お客様に選ばれる航空会社を目指している。

セントレアとの連携、ANA中部空港のこれから

column 発見

 これまでお話した通り、ANA中部空港はイノベーションなどを通じ、安全性・定時性、そしてお客様への快適性や利便性を高める空港オペレーションを提供している。実は高品質なハンドリングを実現できている要因の1つとして、セントレアの施設面も非常に大きな影響を与えている。
例えば、空港内の出発ゲートと到着ゲートの位置関係が挙げられる。空港によっては出発階・到着階が同じ階に設置されており、不慣れなお客様にとっては利用する上で少々分かりづらく感じてしまう。その反面セントレアは、出発を3階・到着を2階と位置を変えることによってお客様の利便性を高めることはもちろんのこと、従業員にとってもハンドリングしやすい環境が整っている。
またセントレアは“空港”という枠組みを超えて、空港内における各種イベントの開催やフライトオブドリームズの開業など商業施設としての発展にも力を入れている。飛行機を利用する目的以外のお客様もセントレアに足を運んでいただく機会が増えることで、空港で感じることのできるワクワクした気持ちから今度は旅行で空港に訪れたい、飛行機を利用したいと思っていただくきっかけになると考えている。


チーム紹介

山田 夏鈴(国際コミュニケーション学部 2年)
大津 茉優(現代中国学部 1年)
奥野 あかり(経営学部 1年)
片山 まりあ(国際コミュニケーション学部 1年)

※本記事は2019年12月現在の内容となります。