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中村区役所新庁舎(令和5年1月移転)

所在地名古屋市中村区松原町1丁目23番地の1

Viewpoint 公務員

公務員とは国や地方公共団体において公務を担当する人のことを指す。民間企業は個人や会社の利益を追求するのに対し、公務員は全体の奉仕者として全国民ができるだけ公平で、かつ安全に生活できるように様々な場面で私たちの生活を支えるなどし、国民全体が幸せになれるような公共の利益を追求する。また公務員は国の行政機関で働く国家公務員と都道府県や市町村で働く地方公務員に分かれ、私たちが取材した中村区役所は地方公務員にあたる。地方公務員は憲法に定められた「地方自治」を具現化する行政機関として様々な業務を行い、地方公務員の役割は市町村や都道府県、政令指定都市、特別区によって異なり、市役所の場合は直接地域に寄り添い、サービスを提供する役割を担っている。また日本の公務員全体の約8割以上がこの地方公務員である。

Viewpoint 中村区役所

中村区役所では運営方針として、『「夢」、「笑顔」、「やさしさ」あふれるまち中村区』を基本目標としており、その目標を達成するために4つの柱を立てている。その内容としては①安心・安全で快適なまち、②いきいきと暮らせる「支え愛」のまち、③魅力と活力にみちた、愛着を感じるまち、④身近で信頼される区役所づくり…となっている。
これらの中で私たちが取材した地域力推進室の職員の方は、③「魅力と活力にみちた、愛着を感じるまち」に主に携わり、そのためのイベント等を複数開催している。
その主な事業としては、太閤秀吉功路やなかむら音楽会、尾張中村めしが挙げられる。
太閤秀吉功路は、中村区が豊臣秀吉の生誕地であることを取り上げ、まちの活性化につなげていこうという思いから始まった事業だ。ル―ト上に設置された太閤秀吉モニュメントを活用した謎解きウォークラリーや、地域の店舗等と連携したキャンペーンなどを実施している。
なかむら音楽会は音大生や高校生などによる演奏を聴いてもらうことで、日常生活を少しでも豊かにしてもらうきっかけづくりを目的として開催されている。遠方からのお客さんもおり、人気のイベントとなっている。
三つめの尾張中村めし事業は、中村区制80周年事業として区役所、地域団体、地元商店街などで開発実行委員会が作られ、コロナ禍以前は市民の方からレシピを募り、レシピコンテストが開催されていた。今年もコロナ禍のためレシピコンテストはできなかったが、愛知大学経営学部の土屋ゼミとの合同企画で学生が考えたレシピが学食でメニュー化され、とても好評だったそうだ。
また、その他の業務としては広報なごやの作成、Twitterなどの更新などをはじめとした広報業務が挙げられる。Twitterにおいてはイベント等の告知はもちろんのことその他防犯や防災の情報、また図書館や文化小劇場、消防署など「地域の情報」についての投稿もリツイートしている。
また、名古屋市内の全世帯に配布されている広報なごやは、昭和24年に創刊されて以来、毎月市政と市民をつなぐパイプとしての役割を果たしている。名古屋市の全区共通の内容と、住んでいる区ごとのイベントやお知らせなどが掲載されている。

取材内容

域力推進室職員のAさん(男性職員)、Bさん(女性職員)に取材してきたこと              

Q:公務員になろうとした理由を教えてください。また、実際なってみてどのような印象を抱いたのかを教えてください。  
公務員になった理由について、Aさんは特に理由はない、法律を勉強していたため、それを活かせる公務員になったのだと語る。
Bさんは以前勤めていた会社の女性管理職の少なさに疑問を覚え転職してきたと語っていた。なお、のちに記載するがこの女性管理職についての懸念はこの職場においてはないのだと語った。
公務員になった後の印象については、二人とも想定していたよりも自由度は高く自分で考える必要があり、やりがいがあると語っていた。

Q:他では味わえない地域力推進室の魅力について教えてください  
他の課よりも、自分で考えて計画したり企画したりする業務が多く、自分の考えを自由にカタチにできる面白さが地域力推進室の魅力だそうだ。
「楽しいイベント」を考えることは自分自身も楽しくなるものだとBさんは語る。
そのようなイベントは地域の人たちとともに企画していくため、顔馴染みの方も多くできるという。そのため道端や区内の店舗で地域の方々に気さくに話しかけられることもあるそうだ。このような点もまた魅力の一つだそうだ。

Q:これから名古屋で生まれ育つ子供達にはどのように名古屋の魅力を伝えていきたいですか?  
この質問に対してはかなり回答に迷っていた姿が見受けられた。しばらくしてAさんが答える。
自分はずっと名古屋に住んでいるし、中学や高校の友達もずっと名古屋に住んでいる。住みづらいと思ったことがないし、名古屋を出たいとも思わない。名古屋は公園も多いためあちらこちらで自然を感じることができ、交流も図る ことができる。また、交通機関は整っており不便ではなく、地域の温かさと便利さを兼ね備えている。この東京ほど大都会ではないけど暮らしに不便さをあまり感じない環境を「あたりまえ」として生活できるところが名古屋の魅力であると語った。
また、Bさんは、中村区に限って言えば、中村区が「秀吉」が生まれた街であり、歴史が深い場所であることを子ども達に伝え、地元を好きになってほしいと語っている。現在では地域の方との意見交換会を通して、そのようなイベントも企画しているそうだ。

Q:SNSやデジタルツールをどのように活用していきますか? 
地域力推進室の業務の一つであるTwitterの投稿は、行政として正確な情報を伝える必要があるため、一般のユーザーほど気軽に投稿できずなかなか大変だそうだ。
基本的なTwitterの投稿は文章と合わせて目を引く画像を添付し、またURLを付随させて詳しいサイトに誘導しているようだ。
ただし、ご年配の方はデジタルツールを使用しない人も多いためにデジタルだけで完結することは不可能だという。だからこそイベント等のチラシは、デジタルと紙媒体の両方を用意する必要がある。たとえ、デジタルが使えない人が少数であったとしても「公務員」であればその少数の人を平等に扱う必要がある。

Q:地域のイベントはどのように思いついているのでしょうか?
基本的には他の自治体のイベントを参考にしたり、地域の人の要望から思いついているそうだ。イベントの予算については年度初めに、太閤秀吉功路といったおおまかな事業ごとに予算が振られ、その中から企画ごとにそれぞれ予算を使うことができるという。
イベントの内容については職員が自ら考えて企画することや、地域の方の要望等から生まれる企画もある。またどの企画やイベントも役所と地域の方と一緒に運営をやっていくのが多い。

Q:女性の働きやすさについて教えてください
名古屋市では、女性の管理職は当たり前にいると語る。管理職はどうしても男性のイメージが強いものだが、平等に扱われる。女性に配慮する、というよりは、むしろ男女に違いはないといった認識のようだ。また昇進については試験式なので男女に関わらず自分の意思で昇進することができるそうだ。
また、育休も男女問わず取れるし、復帰もできるという。育休をとる旨を職場の方々に報告しても取りづらい雰囲気はないそうだ。育休以外でも時短勤務という手段があり、様々な状況に対応できるという。

Q:仕事に対して辛いと思った場面、あるいはもっとこうであって欲しいと思った点を教えてください。
Aさんは「辛くてもそれがチャンスだと思って、逆境を楽しみながら仲間と協力すれば乗り越えることができる」と語った。その上で大変なことは様々な人がいるため一つの方向にまとめるのが大変だけど、管理職として腕の見せ所とも語っていた。
Bさんは、イベント等にも全てに税金が用いられるため「得する人」と「得しない人」が生じないように気を付けなければならないという点、また各方面に色々な配慮をしなければならないという点がなかなか大変な部分であると答えた。

Q:公務員になりたいと思っている人に何かメッセージをお願いします。
Aさんからは公務員になりたい気持ちを持ち続けてほしい。勉強だけでなく、広い視野を持てるように様々な経験をし、失敗から学べることも沢山あるので、失敗を恐れずいろんなことに今のうちから挑戦して欲しいと語っていた。
Bさんからは公務員の仕事は多岐にわたるため状況の変化に強い人が輝くことができる。そのため様々な経験を積んで欲しい。また、自分が住んでいる地域の行事などにも積極的に参加してみてほしい。そうすれば「地域のニーズ」が見えるようになると語っていた。

発見や学び

取材を通して学んだこと

取材を通して公務員の仕事への理解が深まり、さらに興味を持つことができた。その中で一番学ぶことができたことは「公務員の裁量」が意外にあるということだ。なんとなく「公務員」というのは堅苦しく、マニュアル仕事ばかりかと考えていた。実際、部署によってはそうなのだろうし、それは必要なことなのだろう。しかし、地域力推進室においては確かに「ルール」はあるものの、そのルールの中で限界まで自由な発想で自分の考えを形作ることが重要であることを知った。つまり公務員においても民間と変わらずクリエイティビティな発想が必要なのだと分かった。
その上でお二人の「公務員になりたい人へのメッセージ」を伺い、改めて大学生活、それ以外の場面においても幅広い経験を積むように努力することが重要だということを実感した。その豊かな経験は民間に行くにせよ公務員に行くにせよいずれにおいても役立つはずだ。


チーム紹介

池田 羽花 (文学部2年)
磯貝 宥嬉 (経済学部1年)
佐野 弘幸 (法学部1年)
山本 将大 (文学部2年)

※本記事は2023年3月現在の内容となります。