著者 | 永井 崇弘 福井大学准教授、塩山 正純 国際コミュニケーション学部教授 |
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出版社 | あるむ |
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出版日 | 2021年3月25日 |
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ISBN | 9784863331716 |
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アルメニア人のキリスト者ラサール(Johannes Lassar) の手になる漢訳「マタイの福音書」(1807年)は、インドのフォート・ウィリアム大学副学長のブキャナンより英国カンタベリー大主教へ謹呈されたものである。
このたび、英国ランベス・パレス図書館に所載されるそのラサール訳「マタイの福音書」を翻刻・影印し、漢訳聖書研究における貴重な資料を公開することが出来た。また、本書ではラサール訳で使用された音訳語を早期漢訳聖書のそれと比較検討し、ラサールによる漢訳の道程についても述べている。
~編者コメント~
福井大学学術研究院准教授の永井崇弘氏と塩山正純所員(国際コミュニケーション学部教授)はこれまで科研費プロジェクトとして、近代の中国域外における聖書漢訳のルーツとプロセスを探っています。中国域外でも、インドにおけるプロテスタントによる漢訳聖書として、マーシュマン(Joshua Marshman)とその協力者であるアルメニア人ラサール(Johannes Lassar)によるものが有名で、実はそのオリジナルの新約聖書は愛知大学図書館にも所蔵されています。協力者ラサールにはこれ以前に草稿としての「マタイの福音書」鈔本が存在することが指摘されていましたが、永井、塩山の二名はイギリス、ロンドンのテムズ川畔にあるランベス・パレス図書館(Lambeth Palace Library)における調査で、これまで未発見であったこの鈔本『嘉音遵𡂼口挑菩薩之語』を目にすることが出来ました。このラサールの手になる漢訳鈔本は、1807年当時のインドのフォート・ウィリアム大学副学長のブキャナンより英国カンタベリー大主教へ謹呈され、大主教のロンドンにおけるランベス・パレスの図書館に収められ現在に至っていると考えられます。中国本土から遠く離れたインドの地でゼロからの翻訳であるこの鈔本に記されている中国語は、聖書原典の本文がどのようにして中国語化されたのか、またその中国語はどの地域の方言あるいは官話音が基礎となっているのか等、中国域外での聖書漢訳のルーツとプロセスを解き明かしていく上で、非常に有用な資料となるものです。このたび、ランベス・パレス図書館の影印許可を得て、さらに愛知大学国研叢書として採用され、漢訳聖書研究における貴重な資料を広く共有できることとなりました。