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文学部の片岡邦好教授がJASS社会言語科学会の 「第18回徳川宗賢賞」を受賞しました

研究・シンポジウム
本学文学部の片岡邦好教授がJASS社会言語科学会の 「第18回徳川宗賢賞」の優秀賞を受賞しました。

徳川宗賢賞は、社会言語科学会の故徳川宗賢初代会長(1999年6月逝去)の業績と本学会設立に傾けた情熱と精神をたたえ、
2000年度より設立され、毎年本学会誌『社会言語科学』に掲載された論文の中から、とくに優れた論文に授与されるものです。

受賞論文:
「言語/身体表象とメディアの共謀的実践についてーバラク・オバマ上院議員による2008年民主党党員集会演説を題材に」
第20巻1号, pp.84-99  片岡邦好(愛知大学)

授賞理由:
本論文は、バラク・オバマ氏が民主党代表として大統領戦出馬を決定付けた2008年のアイオワ州での勝利宣言の演説を取り上げ、演説のテクスト・
演説実践・TV放映実践の三層の実践と捉えて、それらをマルチモーダル分析の手法で微視的に分析したものである。
これまでもオバマ氏の演説は、多くの言語学者、談話分析者、コミュニケーション研究者が分析しているが、本論文は、語彙やフレーズ、複文レベルの
限定的な談話にとどまらず、演説全体を包括的なパフォーマンスとして捉え、演説者と聴衆が相互行為的に演説を共想する様を、またオバマ氏の言語的、
身体的表象だけでなく、TV放映による戦略的なメディア実践も分析している。
その結果、テクスト分析だけでは理解しえない聴衆や視聴者に向けられた暗黙知に基づく操作・技能を中心に、それを通じて複数のレベルで共創される
詩的テクストと演説者とメディアによる共謀関係を明らかにしている。すなわち,聴衆や視聴者に訴える演説の効果は,語り手個人の技能によるだけでなく、
聴衆とメディアによる多層的な共謀関係により達成されることを明らかにしている。
このように本論文は、オバマ氏の演説についての従来の研究の枠組みを越え、演説のテクスト・演説実践・TV放映実践の三層の実践という観点から考察を
行った大変優れた論文であり、徳川宗賢賞優秀賞にふさわしい論文として高く評価できる。

詳細はJASS社会言語科学会のホームページをご覧ください。

受賞した片岡教授からは以下のようなコメントが出されています。
「徳川宗賢賞を受賞して」
この度は大変栄誉ある賞を授与いただき、未だに驚きと面映ゆさを拭い去れず にいます。改めて、本稿執筆のきっかけを与えて下さった
「現代社会におけるメディア研究」特集号の編者、査読者の皆様に厚くお礼申し上げます。また、日頃からミクロ分析の重要性とマクロ要因の
多様性を痛感させてくれる、多くの研究仲間 からの刺激が何ものにも代えがたい原動力でした。
本論文では、日常に浸透したTV放映という活動を、3層からなるレベル間の統合的な実践という観点から考察しました。もちろんこれは便宜的
な分類に過ぎません。演説というジャンル固有の特殊性に加え,伝えるという行為には普遍的な指向性も潜んでいるため、さらに複雑な様相を
見せる可能性もあります。また、今回は勉強不足ゆえに演説に埋め込まれた政治性にまで踏み込めていませんが、今後の課題として考察を
深める決意を新たにしています。社会生活の大部分がことばを中心に廻っていることを思えば、ことばは空気のようなものかもしれません。
今回受賞は、その無標な性質を異化し、実体化することが言語研究者に与えられた特権であり使命であることを再認識させていただく機会と
なりました。

著者紹介:
 【片岡邦好(かたおかくによし)】
1960年愛知県生まれ
米国アリゾナ大学大学院 Interdisciplinary Ph.D. 
Program in Second Language Acquisition & Teaching (Language Use専攻) 修了
1999年愛知大学法学部助教、2006年同文学部准教授を経て、2008年より同文学部教授
2002年に社会言語科学会徳川宗賢賞受賞
<主要業績>Affect and letter writing: Unconventional conventions in casual writing by young Japanese women. (1997) 
Language in Society 26 (1), 103-136.『講座社会言語科学 第5巻 社会・行動システム』(片桐恭弘氏と共編著)(2005)
ひつじ書房.「道案内の指差しに見る「絶対/相対参照枠」の主観的融合」(2011)
『人工知能学会誌』 26(4), 323-333. Toward multimodal ethnopoetics. (2012)
Applied Linguistics Review 3(1), 101-130. Synchronic and diachronic variation in the use of spatial frames of reference: 
An analysis of Japanese route instruction.(朝日祥之氏と共著) (2015) 
Journal of Sociolinguistics, 19(2), 133-160.『コミュニケーションを枠づける(池田佳子・秦かおり氏と共編著)(2017)くろしお出版 など