中国人客員研究員による法科大学院生への講演を行いました

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 2023年6月28日(水)4限目(14時45分~16時15分),愛知大学車道校舎のK1102教室において,愛知大学法科大学院地域貢献プロジェクト「外国人居住地域への法的支援」の一環として,本学大学院中国研究科・趙暁磊客員研究員(法制史)による法科大学院生を対象とした講演会が行われました。
 趙先生は,本学大学院中国研究科と南開大学大学院(中国・天津市)に学籍をおき,双方の大学から博士号を授与される「デュアルディグリー・プログラム」を利用し,2014年10月から本学大学院中国研究科博士課程に在籍していました。その間に,南開大学で博士号を取得し,現在,常州大学史良法学院で講師として教鞭を執っています。そして,2022年10月から1年間,本学大学院中国研究科において客員研究員として研究活動に専念し,愛知大学での博士号の取得を目指しております。
 本学法科大学院からは,法科大学院生8名,一般の方1名,松井直之教授(司会担当)が参加し,日本で法曹となることを目指している中国国籍の法科大学院生・林鳳英さん,台湾の大学(法学部)への留学経験(4年間)を持つ法科大学院生・梅田愛さんが通訳を担当しました。

【講演内容:古代中国の刑と倫理】
 趙先生は,古代中国において法を意味する文字が「刑」であることから,まず「刑」という文字の成り立ちを『説文解字』などの文献を用いて説明してくれました。「刑」という文字は,その偏が「井」という文字(制度)に由来すること,旁が「刀」という文字(力)に由来することから,「力を用いて制度を維持する」ことを意味するのだそうです。
 そして,「刑」という文字の説明を踏またうえで,古代中国では「刑罰により国を治める」統治システムが構築されてきたことを説明してくれました。具体的には,唐律を例にして,刑罰を用いて維持する倫理(法益)が皇帝の権威や社会秩序などであること,その倫理(法益)に背いた場合に行われる尋問や刑罰が非常に残酷であることなどを解説してくれました。
 講演後には,趙先生と法科大学院生との間で質疑応答が行われ,日本法との類似点や相違点などに関する議論がなされました。

【意義と展望】
 今回初めて,「デュアルディグリー・プログラム」を利用し,本学大学院中国研究科博士課程に在籍していた中国人客員研究員による法科大学院生に対する講演が行われました。ご協力いただきましたすべての皆さまに厚く御礼申し上げます。
 この講演を通じて,法科大学院生は,普段接することのない中国人研究者から,司法試験や法曹実務とはあまり関係のない古代中国の法制度に関するお話を聞くことができました。それにより法科大学院生は,法曹となるために学修している日本法を相対化することができ,日本法の特徴や運用状況などをより深く理解できるようになるものと思われます。その結果,外国法にも関心をもった法科大学院生が司法試験に合格し,将来,多くの外国人の生活する東海地方等で外国人の法的問題の解決に取り組む国際的な視野をもった法曹となることが期待されます。
 今後も,こうした講演を実施することで,法科大学院生の様々な知識や経験を豊かにし,愛知大学が地域社会に貢献していくための一助となることを目指したいと考えております。

以 上