お知らせ

第31回 ビジネスセミナー「インド自動車産業における日本型雇用のあり方~100を越える日系工場への訪問調査からみえたもの~」を開催

開催報告
国際ビジネスセンター主催 第31回 ビジネスセミナー
『インド自動車産業における日本型雇用のあり方~100を越える日系工場への訪問調査からみえたもの~』を開催

 当センターでは、2024年5月16日(木) 14:00~16:00、名古屋キャンパスにて第31回ビジネスセミナーを開催しました。
 神戸大学教授、神戸大学経済経営研究所副所長の佐藤隆広氏をお招きし、インドの経済・文化などの基本的な概要から、100を越える日系製造工場への訪問調査からみえてきた現状と課題などを、わかりやすくお話しいただきました。

<講師>
 佐藤隆広氏:神戸大学教授 神戸大学経済経営研究所副所長

<概要>
 講演では、①モディ政権下のインド経済、②インド進出日本企業の経済活動、③日本型雇用慣行と企業の生産性、という3つの構成でインドの基本的な経済・文化・宗教の概要を紹介しつつ、日系企業がインドの産業発展に果たしてきた役割とはどのようなものだったのかについて分析がなされた。ジャーティ(=カースト)とは単なる階級分別にとどまらず職業集団としての分別でもあり、ジャーティによって社会的に規定された分業社会が根付くインドにおいて、現場ブルーカラーの「多能工化」を訴求する日本的な雇用慣行(価値観)は現地の雇用慣行と相反する傾向にあるという点が指摘された。そのような環境下で100を越える日系工場への訪問調査からみえたものとしては、第一にインドに進出している日本企業は一定程度、日本型経営モデルを移転しているということが見られ、第二に回帰分析の結果から日本型雇用慣行は企業生産性とプラスの相関があり、反対に日本型生産管理は生産性とマイナスの相関性があった。第三にインドにおける生産性が高い日本企業は雇用慣行として日本型モデルを採用し、その一方で生産管理には非日本型モデルを採用しているといった調査結果が紹介された。今後、インド進出を考える日本企業が多能工化といった日本的経営の導入を考慮する際にエネルギーを注ぐべきところとそうではないところを判断する上での一つの参考指標が示された。
 またQ&Aセッションでは中国との比較に関する問いが多く出され、それに対して丁寧な解説がなされた。とくに「今日みられるインドと中国の労働力の質の差はなぜ発生したのか?」という問いに対しては中国が中等教育、特に女性の中等教育に注力してきた一方で、インドでは一部の限られた上位者に対する超高等教育を重視してきたことが両国の労働力の質の格差の原因となっているとの回答がなされた。


             
                            
               

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