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学長室だより

学長のことば

2020年度新入生の皆さんへ・学長メッセージ

新入生の皆さんへ

 この度、愛知大学に入学された皆さんに謹んでお祝いを申し上げるとともに、本学の新たな構成員となられた皆さんを心から歓迎いたします。本来なら入学式において言葉を述べるところですが、ご承知のとおり新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大のなか、皆さんはじめ関係者の健康と安全を考慮して入学式を取りやめとしました。入学式はきわめて重要な大学の行事であるだけに残念でなりません。ご理解いただきたいと思います。
 
 さて、皆さんが入学された愛知大学について説明いたします。1946年に創立されてから74年の歴史をもつ愛知大学には独特の使命・理念があります。それは本学の設立趣意書のなかに示されており、本学の教育研究のめざす方向についての基本的な考えを示しています。そこでは、先の戦争の深い反省にたって世界文化と平和に寄与するために日本の人文系の学問を盛んにし、才能ある人材を育成することを使命とするとしています。そして特殊な使命として三つのことが記されています。ひとつは大都市への偏重集積をなくし、地方分散を望むとして地方社会における学問・文化の振興と貢献です。二つ目は国際的教養と視野をもった人材の育成です。愛知大学は「国際文化大学」をめざすことを述べています。三つ目は転学希望の中部地方出身の学生および中国等海外からの引き上げ学生を受入れることです。この受け皿としての任務は終戦直後の緊急の任務で、すでに歴史的使命を終えました。

 まず、大都市への偏重集積をなくし地方分散を志向し、地方・地域における学問・文化の振興を図るという使命は、当時中部地方において法文系の大学がひとつもなかったこと、地方都市であった豊橋の地に設立されたことを背景としています。つまり、愛知大学は中部地方において最初の法文系大学(旧制大学)として出発しました。以来、本学は中部地方の社会に大きな貢献をしてきました。そして今日、東京への一極集中を是正し地方分権、地方創生が重要な政策課題とされるなかで各地方自治体がまちづくり、人づくり、産業発展と仕事の創出をはかり、大学が地域の知的拠点として地域の発展を担う役割を果たすことが期待されています。その意味では、地方分散を志向し、地方の社会・文化への貢献という設立趣意書の考えは、70数年前に書かれたこととはいえ、その内容において今日的な課題に通ずるところがあるといえます。

 次に、国際的教養と視野をもつ人材の育成という使命は、1901年に中国上海に設立され終戦により廃校となった東亜同文書院の理念を一部継承するものです。戦争により崩壊した経済の復興と生活の再建が急務であった当時の日本において、地方の一大学がいち早く国際的な人材の育成を自らの使命として掲げたことは大いに注目に値します。今日こそ、経済のグローバル化と情報通信技術の急速な発展は、国際社会の交流とコミュニケーションのあり方を大きく変えつつあります。今日、国際的またはグローバルな人材の育成がますます求められているといえます。その意味で国際的人材の育成という使命の提示は、本学創立者たちの先見の明を示すものと言えるでしょう。皆さんが、まずは本学が以上のような独自の使命をもっていること、そしてそうした使命をもつ本学の学生になったことを自覚してほしいと思います。

 皆さんはさまざまな目標や期待を抱いて本学に入学されたことと思います。大学は教育・研究の場であり、学部・学科、研究科の学位授与方針にはそれぞれのカリキュラムにおける学習をとおして達成すべき目標が示されています。すなわち、どのような能力を獲得できるのか、何ができるようになるのかについて具体的に示されています。皆さんは、それに留意しつつ、本学において学習に励んでほしいと期待します。

 以下、本学での学習に関連して皆さんに要望をお伝えしたいと思います。大学の主要な役割は学生に多様な学習の機会を提供することにあります。例えば、正課科目等の履修、社会連携、留学、就職・資格取得、クラブ・サークル等などの活動です。程度の差こそあれ、それぞれの活動が学習の機能を果たしています。また各学部の正課科目についても学部固有の専門教育科目、学部を超えて学ぶ共通教育科目があり、共通教育科目には外国語、数理・情報、自然、社会、人文、総合、体育などの分野が配置され、多様な分野の科目を幅広く学習できる工夫がなされています。近年は、教室での学習だけでなく、教室の外での実践的な社会体験型の学習、グループ討論・発表などの方法による能動的な学習などが増えています。課外活動での学習機会も少なくありません。このような多様な学びこそが大学の特徴であり、その点で大学は専門学校や職業訓練学校と異なります。同時に、大学の学びの基本はカリキュラムに配当された科目の学習にあることは言うまでもありません。つまり大学はカリキュラム科目の学習を基本としつつ多様な学びの場であるのです。皆さんは、この点をよく理解し幅広く学習に努めてもらいたいと思います。
 
 この間、知識とスキルを基礎として、ものごとを論理的に考える力、判断する力、表現する力、さらにさまざまな人々と協働しながら課題を共に解決していく姿勢の育成が唱えられています。本学もこうした能力を育成することを目的とし、それは前述したように本学の学位授与方針のなかにも明記されています。特に、直面するいろいろな課題や問題について自らの頭で論理的に考え、根拠を踏まえて的確な判断をし、結論を引き出し、適切に表現する能力は、変化の激しい今後の社会においても持続可能な重要な能力であり、学問の基本的な作法でもあります。それは個々の専門知識・分野の違いを越えた汎用的な能力でもあると言えるでしょう。ぜひ皆さんがこうした能力を身に付けることを目指して努力してほしいと思います。さらに、皆さんが大学のなかでさまざまな学習経験をとおして身に着けた能力や成果を随時確認し、自ら説明できるようにしてほしいと思います。本学の教職員一同は、皆さんがそのような自律した学習者に成長していくよう最大限サポートをするつもりです。皆さんの本学における学習が充実した、価値あるものになることを心から期待しています。

2020年4月1日
愛知大学学長