黄英哲『漂泊与越境:両岸文化人的移動』『「去日本化」「再中国化」:戦後台湾文化重建設(1945-1947)』:東亜同文書院研究と台湾

 
 愛知大学現代中国学部教授・同国際問題研究所所長黄英哲氏の著書『漂泊与越境:両岸文化人的移動』(台北:国立台湾大学出版中心、2016年)は、日本の領土であった台湾が、1945年の日本敗戦によって中国に復帰する時期の台湾社会について文化的側面から考察したものである。
 その後記は、「愛知大学の前身は上海の東亜同文書院大学であり、戦前には植民地台湾から来た台湾人でこの学校に学んだ者もいる。上海の東亜同文書院大学の卒業生の一部が情報活動に従事していたことが、この学校の性格と位置づけを複雑なものにさせてしまっているが、中国にルーツがあることから、愛知大学と中国との学術交流は極めて盛んである」(266頁)と、東亜同文書院について触れている。
 2017年1月本センター主催国際シンポジウム「東亜同文書院卒業生たちの軌跡を追う」において、台湾中央研究院台湾史研究所許雪姫「論東亜同文書院台湾学生的人数:兼論陳新座、彭盛木、王庸緒三人不同的際遇」が取り上げた“彭盛木”は、黄教授が述べるところの台湾からの入学生であった。また、東亜同文書院の前身日清貿易研究所卒業生の多くが日清戦争後に日本領となったばかりの台湾で通訳などとして活動している。さらに国立台湾図書館が所蔵する台湾総督府図書館旧蔵東亜同文書院調査旅行報告書は、愛知大学霞山文庫や北京国家図書館が所蔵していない時期のものだと思われ、それらは戦後中国側によって整理され、利用された形跡があるなど、東亜同文書院研究にとって台湾は極めて重要な領域である。
 黄教授の著書『漂泊与越境:両岸文化人的移動』と『「去日本化」「再中国化」:戦後台湾文化重建設(1945-1947)』(台北:麦田、[2007]2017年)は、中国復帰後の台湾の文化面でのアイデンティティ形成の過程に主眼をおくものであるが、そうした状況の中で東亜同文書院関係者がどのような活動をしていたのかについて、これまで考察されたことはほとんどなく、両書が進める台湾の国語運動や中国文化普及の拠点となった台湾省編訳館などについての研究は、今後の東亜同文書院研究の新たな展開の契機となりうるものである。
文責:石田卓生 
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